4月2日






新羅が家に帰って目に飛び込んで来たのは、まず壊れた扉だった。
次に見たのは割られたガラス。壁にはナイフの傷。
玄関には愛しい彼女ではなく、二つの黒い靴。
「家に来るのは構わないけど喧嘩しないでよね」
盛大に溜息を吐いて、新羅は友人二人を見遣る。
二人はソファーの端と端に座り、静雄の前にはセルティがいて、必死に宥めていた。
「俺は喧嘩する気なんて全くないんだけど、シズちゃんが直ぐ怒るんだよねえ。お陰で無駄な労力使って疲労困憊だよ」
「死ね」
相変わらず口が立つ臨也と無駄口がない静雄。二人の態度に溜息を吐いて、新羅は反対側のソファーに座る。
「で、何の用なの。わざわざ二人して家を壊しに来たの」
新羅の言葉に、静雄は臨也をちらりと見た。臨也はその視線を受け止め、上着から何やら小さな袋を取り出す。
「はいこれ」
ぽん、とテーブルに置かれた。
「?、なんなの?これ」
新羅は不思議な顔になる。
「誕生日プレゼント。シズちゃんが新羅にあげたいって言うから」
二人で選んだんだよ、と言って臨也は肩を竦めた。
「手前がいつも治療して貰っていて心痛まないのかとか言うからだろっ」
臨也に噛み付くように静雄は言うが、頬が赤い。どうやら照れているらしい。
「へえ…嬉しいよ!ありがとう」
何年もの付き合いで、この二人からプレゼントなんて初めてだった。新羅は嬉しそうに笑う。
「じゃあ帰るよ。行くよ、シズちゃん」
臨也はさっさとリビングを出て行く。
静雄はそれに舌打ちをし、セルティに謝罪すると、臨也の後に続いた。
『…結局仲が良いんだな、あの二人は』
セルティがそう言うのに、新羅は目を細めて笑う。
「でも修理代は請求しなくちゃね!」


101012 22:27
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