門田くんと静雄くん



ドン、と肩がぶつかって、相手の持っていた荷物が廊下に散らばった。
門田は慌てて拾い集める。
「悪い、大丈夫か」
「いや、俺もぼんやりしてた」
白い手が伸びてきて教科書を拾う。金髪の華奢な男。平和島静雄だ、と門田は驚いた。
間近で見る顔は大人しそうだ。声も淡々と表情がない。通常時はこうなのか、と門田は不思議な気持ちだった。
平和島静雄は学園で最も有名な生徒だ。次点で折原臨也。次が岸谷新羅だろう。三人は悪い方に有名で、門田も何度も静雄と臨也の喧嘩は見たことがある。
臨也とはクラスメイトだったが、静雄との面識はない。これが初めての会話だった。
教科書と共に拾い上げた中に、ピンクの手紙がひとつ。凡そ静雄には不似合いなそれは、所謂ラブレターだろう。余計なものを見てしまった、と門田は戸惑う。
それが伝わったのか静雄は苦笑した。どうせ断るから、と言い訳めいた言葉を口にして。
なるほど、確かに通常時の静雄はモテるのだろう。顔も良いしスタイルも良い。あの力にだって憧れる者もいるのだろう。
じゃあな、と別れる寸前に、「折原には言うなよ」と静雄が言った。
驚いて門田が顔を上げれば、もう静雄はこちらに背を向けて歩き去るところだった。どうやら静雄は門田が臨也のクラスメイトなのを覚えていたらしい。
臨也に言うな、とはどう言う意味だろう。臨也が邪魔をしてくるからだろうか。確かに天敵の相手に知られるのは嫌なものだろうが、何だかそれとは違うニュアンスに感じた。
「まあ、いいか」
俺が気にすることじゃない。
門田はもう考えるのをやめ、静雄と反対方向へ歩いて行った。

100922 13:29
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