7DAYS






七日目B


映画館を出ると、臨也は静雄を振り返った。
「今の映画さあ、泣くシーンあったっけ?」
「うるせえ!」
チーン、と静雄は鼻をかむ。感動しやすいのか、今見た映画で涙ぐんでしまったらしい。それが可愛らしく、臨也は笑ってしまった。
「笑うな」
静雄は目許が赤い。目を擦ったせいか照れてるせいか、臨也には判断がつかなかった。
「じゃあ次はショッピングでもしようか」
手を引いて臨也は60階通りを歩き出す。静雄は黙ってそれに従った。
「せっかく恋人なんだしペアで何か買う?」
「え…別にいらねえよ」
臨也の提案に、静雄は戸惑う。どうせ後数時間。形に残るものはやめた方がいい気がした。後から思い出すから。
「俺がシズちゃんにプレゼントするから」
臨也はそう言って、スタスタとアクセサリーショップに入ってしまう。
臨也はいつも強引だ。静雄は別にそれが嫌いではないけれど、少し困惑する。
「これいんじゃないかな」
シンプルなシルバーリングを指差して臨也は静雄を振り返る。静雄はそれに眉を顰めた。
「んな高いのいらねえよ」
「指のサイズどれくらい?」
渋る静雄を無視して、臨也は買う気のようだ。
流されるままにサイズを計られ、臨也は同じリングを二つ買ってしまった。
「…お前には呆れるわ」
店を出て、人通りの少ない道を歩きながら、静雄は溜息を吐いた。臨也はそれに笑う。
立ち止まり、綺麗に包装された箱から指輪を出して、静雄の手を取った。
「嵌めてあげるよ」
臨也はそう言って、静雄の左手の薬指にそれを嵌める。静雄の頬が赤く染まるのに、臨也は穏やかに笑った。
「結婚式みたいだねえ」
「死ね」
「俺にも嵌めてくれる?」
臨也がそう言うのに、静雄は赤い顔で舌打ちをする。同じく箱からリングを取り出して、臨也の手を取った。白くて細い指。静雄はそれに目を細める。
薬指に嵌めてやると、それはすんなり入った。静雄はゆっくりと手を離す。
「実は同じサイズなんだよね、俺とシズちゃん」
臨也はそのまま静雄の手を掴んだ。手を引いてまた歩き出す。
手を引いていつも先を歩く臨也に、静雄は口を開いた。
「なあ」
「ん?」
「前じゃなくて隣歩けよ」
そう言う静雄の顔は、僅かに赤い。
臨也はそれに目を丸くし、やがて笑みを浮かべた。
「そうだね」
歩を緩め、隣に立つ。そして二人で歩き出した。


101009 10:51
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