甘い唇


青緑色の四角い箱から煙草を一本取り出す。
それを薄くて赤い唇に銜え、Zippoを使って先端に火をつける。
深く息を吸い、それによって生じた煙りを吐く。
一連の動作は酷くこの男に似合っていた。
金の髪に青いサングラス。背が高く細身の身体。
ムカつくくらいモデル体格だ。

「シズちゃん」
「うるせえ。話しかけんな、死ね」
「肺ガンなっちゃうよ。まあそれで死んだら俺は嬉しいけど」
「黙れ」

言葉とは裏腹に穏やかな表情の静雄を見つめながら臨也は考える。
毎日毎日煙草を吸って彼はニコチン中毒になっている。きっと彼の肺は真っ黒なんだろう。
その割に歯は黄色くないし、唇も甘いのは何故なのか。

「ひょっとして俺の味覚がおかしいのかな」
「またろくでもない事考えてやがんな、死ね」
「ホントにシズちゃんってツンデレだよね」
「きめえ」
「キスしていい?」
「は!?」


――…うん。やっぱりシズちゃんの唇は甘かった。
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