7DAYS






五日目A


授業が終わってもだらだらとしている生徒が多い中で、臨也はさっさと荷物をまとめて廊下に出た。廊下はガヤガヤと同級生たちで騒がしい。その中を臨也は真っ青なマフラーを巻いて、少し猫背気味に歩いて行く。
目指す教室に着いたが目的の人物がいない。取り敢えず待とうかと思っていると、眼鏡の友人がこちらへとやって来た。岸谷新羅だ。
「静雄ならお呼び出しだよ」
「職員室?それともどこかの馬鹿な不良かな?」
臨也は廊下の壁に背を預け、唇を吊り上げる。新羅はそれに、へらっと笑った。
「どちらでもない。恋愛沙汰さ」
「…へえ」
臨也は僅かに目を見開く。なるほど、そちらの呼び出しか。
「本人はかなり面倒臭そうだったけどね」
「ふうん」
「…臨也、目が笑ってないよ」
新羅はそう笑って、茶化すように臨也の肩を叩いた。
臨也はそれに肩を竦める。
「恋人としては気になるだろう?」
「…君さあ」
新羅はずり落ち気味の眼鏡をかけ直した。眼鏡の奥の瞳には、もう茶化す色はない。
「あの時、わざと負けたんじゃない?」
「ゲーム?」
「そう」
罰ゲームを決めた時。
臨也が薄く笑ったのを、新羅は覚えている。
「…どうだろうね?」
臨也は口端を吊り上げ、漆黒の髪をかき上げた。薄く笑いながら。
「あ、戻ってきたよ」
廊下の向こうに見える金髪を見て、新羅は声を上げる。釣られて臨也も振り返った。
静雄は大層不機嫌な顔で歩いてきた。余程面倒臭かったのだろう。
「あちゃー、機嫌が悪いね。僕は退散するよ」
そそくさと新羅は教室に逃げ込む。臨也はそれを笑って見送った。
静雄は臨也に気付き、不機嫌な顔を何やら複雑な表情に曇らせる。
「臨也」
「ちゃんと断った?」
「…新羅が言ったのか」
あのおしゃべりめ。静雄は小さく舌打ちをした。
「どうだったの」
「…断ったよ」
「だよねえ」
臨也は片眉を吊り上げて、楽しげに笑う。
「シズちゃんには恋人がいるもんね」
その言葉に、静雄は眉を顰めた。色素の薄い瞳が、僅かに揺れたのを臨也は気付く。
「あと二日間だけな」
静雄はそう言い、鞄を取りに教室に入って行った。


101002 09:29
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