7DAYS






四日目@


「今日さ、委員会あるから先に帰ってて」


臨也にそう言われ、静雄は黙って頷くしかなかった。
しかし新羅はもう帰ってしまったし、予定があるわけでもない。何だか一人で早く帰宅する気が起きなかった。
臨也が委員会…ねえ。
何だか柄じゃない気がした。そう言う面倒臭そうなものは、回避しそうだからだ。
静雄は誰もいない放課後の教室で、ぼんやりと外を見ていた。机に頬杖をついて。
グラウンドでは部活動の生徒たちが、練習に励んでいる。時折掛け声が聴こえていた。
静雄はこの力のせいでスポーツなんて出来ない。球技をすればボールを破壊してしまうし、走るのはあまり好きではないし。
野球部が練習をしているの見て、昨日ここで臨也を見ていたのを思い出す。
ジャージ姿だったものの、あの男は携帯ばかり見ていた。あの後ちゃんと体育をやったのだろうか。臨也がスポーツに励む姿を、静雄は想像できない。
そんなことを考えながら、静雄は自身の携帯を見る。着信履歴には、臨也の名前があった。メールの受信にも。
静雄にはなんだかそれが酷く現実味がない。殺したい程に大嫌いな相手の名前が、自分の携帯に表示されているなんて。たちの悪い冗談だ。
ちょうどその時、携帯が震えた。驚いてメールを開けば、それは臨也からで。
『委員会いま終わった。帰宅中?』
静雄はそのメール内容を見て、僅かに躊躇う。
なんて答えよう。学校にまだいると答えれば、待っていたみたいになってしまう。それは静雄にはたまらなく嫌だ。
悩んだ挙げ句、今家だと嘘をついて送信した。バカバカしい嘘。
それっきりメールは来なかった。寧ろ返信がない事に、静雄は少し安心する。携帯を閉じ、ポケットへとしまい込む。
まだ帰るのはよそう。道端でばったり会うわけにも行かない。
静雄はまた頬杖をついて、グラウンドの野球部に目を向けた。

「シズちゃん」

嫌な名称を呼ばれ、静雄は顔を上げる。
赤く染まった教室の入口に、臨也が立っていた。


100929 22:41
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