7DAYS






三日目A


風呂から上がってベッドで本を読んでいると、振動音が聴こえた。携帯の着信だ。
どこだろう。
静雄はあまり携帯を触らないので、多分制服のポケットに入ったままかも知れない。
読んでいた文庫を放り投げ、ベッドから下りる。案の定、制服のポケットにそれはあった。
一件のメール。
親友だろうか、と思ってメールを開くと、それは臨也からだった。
『今何してるの』
短く、これだけの文。
静雄はそれに眉を顰めながらも返信を打った。
本を読んでた。
と、同じく短く。
暫くすると今度は電話がかかってきた。さっきのあれは、どうやら様子を窺っていたらしい。
静雄は少し戸惑って、震える携帯を見ていた。画面には着信の文字と、臨也の名前。
「…何か用か」
通話のボタンを押して、静雄は電話に出る。携帯からは、臨也のいつもの声が聴こえてきた。
『用なんてないよ。電話してみただけ』
ははっと臨也の笑い声が静雄の耳に届く。静雄は軽く溜息を吐いた。
「用もないのに電話してくんな」
『シズちゃんの声を聴きに』
さらっとそう言われて、静雄は黙り込んだ。
良くこんなことをぬけぬけと言えるものだ。きっと色々な女に言っているのだろう。呆れてしまう。
臨也はそれから暫く下らない話をした。学校のことや家族の話。双子の妹がいると言うのも初めて知る。
俺は臨也のことを何も知らないんだな。と、不思議な思いだった。
もちろん喧嘩ばかりしている相手のことなど知りたくもないのだが、臨也はそんな静雄とは逆の考えなようだ。臨也は静雄のことは良く知っている。ひょっとしたら本人よりも。
静雄は臨也のおしゃべりに付き合い、適当に相槌を打った。理屈っぽさはあるが、臨也は話が上手い。これに人は誘導されるのだろう。
『じゃあまた明日ね』
そう言って唐突に電話は切れた。
静雄は息を吐いて携帯の画面を見る。通話時間は1時間と少し。静雄にとっては長い電話だ。まさかこんなに話していたとは。少し驚いた。
ずっと握っていた携帯は温かくなっている。電池も減っていた。静雄は充電器を携帯に差し込む。
また明日、か。
静雄は電話が切れる前の臨也の言葉を思い出す。
また明日、付き合っている振りは続く。終わりの日まで。
あと四日だ。


100929 11:46
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