7DAYS






一日目@


雨が降って来た。
臨也は机に頬杖をついて、先程から窓の外を見ている。
クラスメイトたちが、雨で騒いでいた。傘がないだの、濡れるのは嫌だの、騒いでも晴れるわけでもないと言うのに。
雨脚はどんどん強くなり、あっという間に土砂降りになる。秋の空は変わりやすいのだ。
いつの間にかホームルームが終わり、クラスメイトたちは帰り支度をしていた。臨也はそれでも窓から視線を離さない。
帰宅する生徒たちが様々な色の傘を持って校門から出て行く。傘がなく、走る生徒もいた。
ふと、ざわついていた教室が静まり、臨也はそこで初めて顔を上げる。教室の入口に金髪の青年が立っていた。
「臨也」
彼は良く通る声で臨也の名を呼ぶ。例え教室がざわついていたままでも、それは臨也に聴こえただろう。
臨也は立ち上がり、クラスメイトたちには目もくれずに教室を歩く。彼を目指して。
「帰るの」
「ああ」
「分かった」
臨也は席に戻って鞄を手にした。チラリとまた外に視線を向ける。雨は当分、止まないだろう。
少しだけ静かな教室を、金髪の青年に続いて後にする。きっと噂はあっという間に広がるだろう。あの折原臨也と平和島静雄が一緒に帰るなんて。
「シズちゃん、傘あるの?」
「幽が持たせてくれた」
「いい弟だね」
厭味ではなく、本当にそう思う。
そんな臨也の言葉に、静雄は何も反論しなかった。
「お前は?」
「ある」
「そうか」
静雄は臨也の半歩前を歩きながら、廊下の窓に目を向ける。空は薄暗い。
「傘が一つなら相合い傘できたのに」
はは、と臨也は笑う。静雄はそれを少しだけ嫌そうに見遣った。馬鹿が、と低い声で呟いて。
二人は傘を開いてそれぞれ歩き出す。周りの生徒の視線が刺さるのを、全く気にしていない。


「あれはどうしたんだ?」
二人を面白そうに校舎の窓から眺めていた新羅に、門田が声をかけた。
「あれはねえ、罰ゲームだよ」
「罰ゲーム?」
門田が首を傾げるのに、新羅はふふふと笑う。
「三人でゲームをして僕が勝ったんだよ」
「一緒に帰るのが罰ゲームか」
お前ら何やってるんだ、と門田は苦笑した。
「一緒に帰る?ああ、違うよ」
新羅がにこにこと笑うのに、門田は眉を顰める。少し嫌な予感がした。
「一週間付き合ってみて、って言ったんだ」

勿論、恋人としてね。


100926 19:52
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