看病






「あーもう。風邪うつさないでよ」
ぐすぐすと隣で鼻をすする静雄に、臨也はうんざりした声を上げた。
静雄は額に冷えピタを貼り、カシミアのティッシュで鼻をかむ。
「う゛る゛せえ。だったら帰れ」
鼻声で凄まれても怖くも何ともない。
静雄は布団に丸まって、しっしっと臨也に手を振った。
「新羅に診てもらったら?」
「寝れば治る」
「薬飲みなよ、せめて」
ゴホゴホと更に咳込むのに、臨也はますます眉間に皺が寄る。
「栄養あるもの食べるとかさ」
「いい」
静雄は布団に包まってただ目を瞑るだけだ。
臨也は深く溜息を吐いた。
仮にも池袋最強と呼ばれる存在が、なんてみっともない姿だ。
「っていうか、シズちゃんでも風邪ひくんだね」
内臓はやはり普通の人間なのか。強度に優れた肉体と言う鎧を持っているくせに。
しかし天敵がこんな弱っているのは酷くつまらない。
静雄はいつの間にか大人しい。寝てしまったようだ。
臨也ははあっと再び溜息を吐いた。
取り敢えず何か食べる物を買って来ようか。水分とか薬とか…。
臨也が出ていこうとすると、くいっとコートを掴まれた。
驚いて見ると、布団から伸びた静雄の白い手がコートの裾を掴んでいる。
「なんなのこれは」
「行くなよ」
寝ているとばかり思ったのに。
半分寝惚けまなこの静雄は、ギュッと臨也の衣服を掴んだままだ。
「…どこにも行かないよ」
臨也は優しく頭をなでてやる。
静雄は「ん」と小さく返事をするとまた目を閉じた。暫くして聞こえる寝息。臨也のコートは掴んだまま。
「…しょうがないな」
臨也は金髪の頭を優しく撫で、笑った。


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理奈さんリクエスト。風邪ひいたシズちゃんに看病する臨也。
100918 07:35
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