癒して






何度やってもエラーが出て、臨也は溜息を吐いて眼鏡を外した。パソコンを休止モードにし、立ち上がる。こんな時は休憩した方がいい。
パソコンが休止モードに入る前にディスプレイの時計を見ると、ちょうど丑三つ時だった。
もうこんな時間か。
目を押さえながら仕事部屋を出る。薄暗い廊下を歩いて寝室に向かう。静寂に包まれ、物音一つしない。
寝室に入ると壁際に大きなベッドがあり、金髪の青年が四肢を投げ出して寝ていた。
臨也はベッドに腰をかけると顔を覗き込む。静雄はぐっすりと寝入っていて、ぴくりとも動かなかった。
金の髪に優しく触れると、さらりとした手触りを返す。脱色して染めているだろうに傷んでいないのが不思議だ。
髪を撫で、頬に触れた。温かい。顔を近づけて柔らかな唇に口づけると、ぴくりと長い睫毛が動いた。
静雄の瞼がゆっくりと開く。中から薄い色素の瞳が現れ、臨也をその目に捉えた。
「臨也…?」
「起こしちゃったね。ごめん」
額にかかる前髪をかき上げて優しくキスをする。
静雄は何度か瞼を瞬くと、擽ったそうに笑った。
「ん…、仕事終わったのか?」
「今日はもうやめる。ちょっと疲れた」
臨也は苦笑して静雄の肩口に額をつける。はあ、と溜息を吐いた。
「もう寝ろよ」
静雄は臨也の背中に腕を回すと、ぽんぽんと軽く叩く。子供をあやしているみたいに。
「うん。シズちゃんに癒して貰おうかな」
臨也は微かに笑うと、ゆっくりと目を閉じた。



100916 15:32
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