Romeo and Juliet




ピーピーピー
洗濯機から音がする。静雄は読んでいた雑誌から顔を上げた。洗濯が終わったらしい。
丸く濡れた洗濯物を取り出して、一つ一つ丁寧にベランダに干してゆく。
今日はいい天気だ。
青空が澄んでいるし、風も穏やか。休日にこんな天気が良いのは気分がいい。
知らず知らずに鼻歌が出ていたらしい。洗濯物を全て干して部屋の中に入ろうとすると声を掛けられた。
「ご機嫌だね」
ああ…嫌な声だ。
静雄はベランダの手すりに手を置いて、身を乗り出す。嫌な予感でいっぱいだ。
見下ろせばアパート沿いの道路に、折原臨也が立っていた。真っ黒なコートを着て。
「臨也」
「やあ」
「何しに来た」
静雄の眉間に皺が寄る。先程までの機嫌の良さはどこへやら、一気に機嫌は下降だ。
「天気が良いから散歩」
臨也は口角を吊り上げて笑う。その笑顔は胡散臭くて、静雄には鬱陶しい。
「何が散歩だ。さっさと帰れ」
「ははっ、こうしているとロミオとジュリエットみたいだね」
からかうようにそう言って、臨也は肩を上げて笑う。
静雄は舌打ちをした。
青空で、洗濯物があって、何がロミオとジュリエットかのか。本当にこの男はうざい。
「何しに来た」
もう一度、静雄は言った。この男が偶然通り掛かるわけがないことぐらい分かっている。
「天気が良いからさ、」
臨也はポケットに両手を突っ込んで笑う。
「俺とデートしませんか?ジュリエット様」
「死ね」
静雄は一言そう吐き捨て、窓をピシャリと閉めた。全く馬鹿馬鹿しい。嫌がらせにもほどがある。
やがて玄関の扉が開いて臨也が勝手に入って来た。ああ、もう。本当にうざくて堪らない。
「勝手に入って来るな、死ね」
「酷いな、シズちゃん」
臨也はあろうことか土足で入り込み、静雄の側までやって来る。
「デートしようよ」
「お前な…」
「こんな天気がいい日に家にいるの勿体ないと思わない?」
臨也はそう言って、静雄の手を取った。恭しくお辞儀をし、手の甲に口づける。
「私とお出かけしてくれませんか?ジュリエット様?」
かあっと静雄の顔が瞬時に赤くなり、手を振りほどく。
「死ね!」
「あははっ、どう?」
臨也の目は真剣だ。静雄はそれに、手を押さえて舌打ちをした。
「……少しだけなら」
「ありがとう、シズちゃん」
臨也は嬉しそうに笑い、静雄の腕を取る。
「ちゃんとオシャレしてね?いつものバーテン服は禁止だから」
「分かってるよ」
静雄は赤い頬のまま、溜息を吐いて外を見た。外は真っ青な青空だ。きっと今日はデート日和だろう。
(2010/10/29/11:46)
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