暗闇で抱き起こされた。
突然体を引っ張られ、静雄は寝ぼけた目をしばたたく。
そのままきつく抱きしめられる。温かい腕。香水の匂い。
この香水の香りは知っている。
口づけられた。あっという間に入り込んで来る舌。
くちゅくちゅと唾液の音が響くくらい、何度も何度も。
「ん…」
静雄はまだ寝ぼけたまま、鈍い動きで相手の背中に腕を回す。手触りで相手がコートだと分かった。
べろりと頬を嘗められた。耳たぶも噛まれ、首筋にも舌が這う。
「あ…う…」
目を薄く開けた。暗闇過ぎてよく分からない。
「いざ、やぁ…」
静雄は自分でも信じられないくらい、甘ったるい声が出た。ぴくり、と相手の動きが止まる。
「いざや…?」
ああ、眠い…。なんだ…?
相手の動きが止まったことで、静雄は再び睡魔に落ちていく。
眠りに落ちる瞬間、声がした気がした。
シズちゃん。


起きると朝だった。
静雄はぼうっと時計を見る。時刻は7時。
昨夜、誰かに口づけられた夢を見た気がした。なんて夢を見るんだか…静雄は赤くなって舌打ちをする。
起き上がってカーテンを開ける。窓を開けると風が入り込んで来た。
ふわりと香る匂い。この匂いは臨也の香水だ。静雄はそれに驚いた。
「夢…だよな?」
どっちが本当?


100912 09:44
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