スイーツ







慣れというものは恐ろしいもので、静雄はこの目の前の女とお茶をするのに日常になってしまっていた。
「はい」
波江が静雄の為に準備してくれるスイーツは甘くて美味い。
ありがとう、と小声で礼を言い、ケーキを受け取る。
そんな二人をパソコンから顔を上げて見ていた臨也はチッと舌打ちをする。
静雄は気づかなかったようだが、波江は気付いたようだ。
『男の嫉妬はみっともないわよ』と目で伝えて来る。ああ、うざい。
波江は気を使ったのかコーヒーを飲み終わるとさっさと帰ってしまった。定時前だったが、臨也もそこは何も言わない。
「シズちゃんケーキもいいけど俺と話そうよ」
黙々とケーキを食べる静雄を見ながら、臨也は不機嫌な声色で話しかける。
静雄はちらっとサングラス越しに臨也を見たが、直ぐに視線をケーキに戻してしまった。余程ケーキの方が大事らしい。
臨也はハアっと深く溜息を吐いて、パソコンの電源を切る。
「シズちゃんそんなに甘いものばっかり食べてたら太るよ、いつか虫歯になるよ、糖尿病だよ」
「臨也」
「なに」
「うるせえ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
臨也は今度こそ黙りこんだ。
自分で静雄のためにスイーツを毎日用意させてるというのに、臨也は心底後悔する。けれどスイーツという口実がなければ静雄はなかなか新宿に来てくれないし。
頭を抱えて悶々としていると、静雄の笑い声が聞こえた。
顔を上げれば静雄が笑ってる。フォークを口に咥えたまま。
「シズちゃん・・・」
「お前面白いな」
「・・・・・・・・俺からかうのは好きだけど、からかわれるのは好きじゃないんだけど?」
不機嫌な顔の臨也に、ははっと静雄は尚も笑う。
「こっち来いよ」
「・・・」
静雄に呼ばれて訝しげに近づけば、口にケーキを突っ込まれた。
「ちょ・・・」
「美味いだろ?」
「・・・美味いって言うか甘い」
臨也の顔が曇る。甘いのは嫌いではないが、甘すぎるのは考え物だ。
静雄は笑ってフォークを皿の上に置いた。どうやらやっと食べ終わったようだ。
「シズちゃん、生クリームついてる」
臨也は手を伸ばして静雄の唇に触れた。指の腹でそれを取ると、ぺろりと舐め取ってやる。
それは先ほど口にした物よりも酷く美味く感じられた。
臨也はそのまま静雄の頭を撫でると、体を引き寄せて唇を重ねる。
静雄が驚いて目を丸くしている間に、唇に舌を侵入させた。やはり口腔内も甘い。舌を絡ませ、唾液がちゅくちゅくと音がする。
臨也はゆっくりと静雄から唇を離した。
「…臨也、」
「なあに」
「俺、明日はプリンいい」
「…分かったよ」
臨也は楽しげに笑い声を上げると、静雄の衣服を脱がし始めた。



100831 07:23
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