ごちそうさま







臨也は真っ暗なキッチンで冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫の中の光りで、少しだけ周囲が明るくなる。
中からペットボトルの水を取り出して、臨也は再び扉を閉めた。
ぺたぺたと裸足で歩いて寝室へと戻る。
臨也は上だけ黒いシャツを羽織っていて、あとは裸だった。
寝室に戻るとベッドを見遣る。ベッドは綺麗にシーツが掛けられており、使われた形跡はない。
フローリングには衣服が散らばっていて、その衣服の上に裸の男が転がっていた。
金髪のその男はしなやかな裸体を隠そうともせず、ただぼんやりと窓から見える月を見ていた。暗がりの中で。
月の光りだけで一層白く見える男の裸体に、臨也は少し扇情的な気分になるが黙っていた。
臨也は水を一口含むと、男に覆いかぶさる。男はそれに一瞬驚いたように目を見開くが、やがて黙って口づけを受けた。
ごくん、と静雄が水を嚥下するのに、臨也は満足げに唇を離す。
顔を見ればきつい眼差しで臨也を睨んでいて、思わず笑い声を漏らした。
「美味しかった?」
「死ね」
「水も、俺も、美味しかっただろう?」
「どけ」
はははっ、と臨也は尚も楽しげに笑い、静雄の上から退いた。
静雄は臨也を睨んだまま、ゆっくりと体を起こす。腹や床に飛び散った白い液体に、ちっと舌打ちをした。
「食われたのは俺の方だろ」
「確かにね」
「臨也」
名を呼ばれ、水を飲んでいた臨也が顔を向ける。
「美味かったか?」
「うん」
「そうかよ」
静雄はまた舌打ちをする。頬を微かに染めて。
臨也は水を飲んで笑った。
「また食べさせてね」


100827 23:16
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