同級生




子供の泣き声がして目を向ける。
その子が持っていただろう風船が、空へと逃げたした瞬間だった。

静雄は真っ青な空に真っ赤な風船が飛んでゆくのを見て目を細める。
「静雄、どうしたの」
立ち止まった静雄に新羅は振り返った。
「風船」
静雄は一言そう言って歩き出す。
新羅は意味が分からず首を傾げたが、直ぐに静雄の後を追って来た。
「あれはさすがのシズちゃんでも取れないね」
声に顔を上げれば、天敵が笑って立っている。静雄の眉に皺が寄った。
「池袋に来るなって言ってんだろ」
「用事があるんだから仕方ないよ。それにしても君達目立つねえ…」
金髪にバーテン服と白衣の男が一緒に歩いてる姿はなかなか珍しい。
「偶然会ったんだよ、そこで。高校の時みたいだよねえ」
にこにこと新羅は言う。これが制服姿だったなら違和感はないのだろうが。
「あくまで偶然だからさ。臨也怒らないでよ」
「…何で俺が怒るのかな?」
「えっ、違うの?」
臨也と新羅が仲良くお喋りをしてる中、静雄はすたすたと歩いて行く。
「待ってよ、静雄」
それを新羅が追いかける。
臨也が静雄をからかいながらついて来る。
…高校の頃みたいだ、と静雄も思う。
3人でこんな風な日常。
もう二度と戻れない。
「じゃあ僕帰るからね。また遊びに来て」
新羅は家の方向へ帰っていく。
「シズちゃんが襲ってこないの気持ち悪いや」
臨也も肩を竦めてどこかへ居なくなる。

静雄は一人になり、煙草に火をつけた。
高校生の頃が懐かしい、だなんて。
俺も歳を取ったな。
静雄は煙を吐いて、仕事場へと歩き出す。



100827 07:06
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