プリン




俺んちに遊びに来てよ、とあっけらかんと言われ、静雄は頷いてしまった。
二人で電車に乗って、新宿に着く。そして今はマンションの近所のコンビニにいた。

「シズちゃんまだ?」
いらいらとして臨也は声をかける。
静雄は先程からスイーツ売り場から動かない。その売り場には何種類ものプリンがあって、どうやらどれを選ぶか悩んでいるらしかった。
臨也の言葉も聞いているのかどうか怪しいもので、じっとプリンを見ている。
「全部買っちゃいなよ」
臨也は痺れを切らしてプリンを全種類カゴに入れてしまった。
「おい」
驚く静雄を無理して、すたすたとレジに向かう。

会計を済ませて外に出ると、静雄は困ったようにレジ袋を見遣った。
「こんなに食えねえぞ」
静雄は意外に少食なのだ。
「無理に一気に食べなくていいよ。一日一個にしたら?」
言われて賞味期限を見れば、結構まだ期間がある。
「一日一個でも一週間はかかるじゃねえか」
そう言いながらも静雄は嬉しそうだった。
「ああ、シズちゃん」
前を歩いていた臨也が、くるっと振り返る。
「?」
「そのプリン、俺の冷蔵庫専用だから」
「は?」
「毎日俺んちに食べにおいで」
ニィと笑って、臨也はまた歩き出した。
静雄は一瞬ぽかんとし、直ぐに舌打ちをする。
「…毎日プリン食いに新宿かよ…」
その顔はほんのり赤かった。


100823 18:55
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