匂い。




今日抱いた女は甘い香水の匂いがしていた。
自分にも染み付いていそうで、臨也はうんざりして衣服を脱ぐ。
着替えているとふとテーブルに置かれた煙草とZippoが目に入った。臨也は煙草は吸わない。恐らくあの男が忘れて行ったのだろう。
間抜けな事だ。きっと忘れたことに気付いて苛々しているだろう。かと言って取りにも来れない。煙草は買えば済むがZippoはそうはいかないし。
それらを想像して、臨也は喉の奥で楽しげに笑う。機嫌が少し上昇した。
こんな臭い香水の香りよりも、あの男の煙草の香りの方がずっと好みだ。
臨也は気紛れに女を抱いたことを後悔した。抱いている間、あの男の骨張った手足や、鎖骨、声、唇、そんなことばかり思い出していたから。ああ、もう今思っただけで既に抱きたい。あの男を抱いてめちゃくちゃにしてやりたい。
取り敢えず早くこの自身に染み付いた嫌な匂いを消し去らねばならない。
臨也は裸になって浴室へと歩く。
上がったらあの男に連絡を取ってみようと思いながら。


100821 03:25
×
- ナノ -