敵わない




臨也は机に頬杖をついて窓の外を見ていた。
教室は昼休みで生徒のおしゃべりが煩い。たまに取り巻き見たいなクラスメイトたちが話しかけて来るが、適当に相槌を返す。
ふと騒がしい廊下が一瞬静まって顔を向けた。
廊下を金髪の青年がスタスタと歩いてる。周囲が一瞬静まり返ったのも全く気にしていない。
彼はこの学校では有名人だ。憧れと恐ろしさを持って、皆が彼を見る。彼にとってはどうでもいいもの。きっとクラスメイトの名前さえ覚えているか怪しい。
人が多い廊下を、颯爽と歩く姿はまるで王様だ。
臨也は立ち上がって教室を出る。クラスメイトの視線が臨也に集まるが、臨也も全く気にしない。
「シズちゃん」
声を掛けると直ぐに静雄は振り返った。とても不機嫌そうな顔で。
「なんだよ」
犬猿の仲の二人が会話する様を周囲は好奇と恐怖の視線で見ていた。
「今日一緒に帰らない?」
「嫌だ」
「新羅抜きで」
「嫌だって」
「まあそう言わず・・・なに?」
臨也は眉間に皺を寄せる。静雄が急に臨也の顔をじっと見つめてきた。
静雄の顔が近づいて来て、結構な至近距離。臨也は少したじろいだ。
「臨也」
「なに?」
「保健室か新羅のとこ行け」
「・・・・」
静雄はそれだけ言うと、黙り込んだ臨也を残してスタスタと歩いていく。振り返りもせず。
臨也はそれを見送り、ハァと溜息を吐いた。
何で分かったんだろう。
額に手をやると少し熱っぽい。さっきからだるかったのだが、少し熱がありそうだ。
「シズちゃんに気づかれるなんて不覚だな」


100820 15:56
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