やきもち




ひょい、と臨也のパソコンを後ろから覗き込んだ。
臨也のパソコンの中には自分と同じ顔の存在がいる。彼は低い声で何か歌っていた。
「なに、シズちゃん」
臨也が静雄に気づき、ヘッドフォンを外して振り返った。
「…それ楽しいのか」
「楽しい」
即答されて静雄は黙り込む。自分としては全く同じ顔なのでかなり気持ちが悪いわけだが。
臨也はまたパソコンに意識を戻したようだ。ヘッドフォンをつけて、またマウスで何やら作業をし始める。
静雄は軽く溜息をつくと臨也に背を向けた。
部屋を出て靴を履き、さっさとマンションから出て行く。
煙草に火をつけ、大股にゆっくりと夜の街を歩いた。
暫くすると携帯が鳴る。見なくても誰からだか分かるので無視した。
本人が目の前にいるのに同じ顔の存在を愛でる感覚が静雄には分からない。
イライラとするこの感情は嫉妬なのだと分かっていたが、相手は人間じゃないしまして同じ顔だ。馬鹿馬鹿しかった。
携帯がまだ鳴っている。
いい加減煩くなり、静雄はそれを思い切り地面に打ち付けた。直ぐに静かになるのに、静雄はスッキリする。
静雄は意外に自分はかなり怒っているのだな、と酷く冷えた頭で思った。



100813 23:09
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