お花




「折原先輩に、だって」
臨也は机に頬杖をついて、小さな花束を指で突っついた。
「…お前誕生日だったっけ?」
「違う」
「珍しいな」
なんでもない日に花束のプレゼントなんて。
静雄は机の上のそれをチラリと見て、直ぐに視線を外す。男に花束なんて、静雄から見れば滑稽だ。
臨也は赤い花をひとつ千切ると、静雄の耳に挿してやった。
「おい」
「似合うね」
金髪に赤い花。
静雄は嫌そうに顰めっ面をした。
「嬉しくねえ」
「俺はどれがいいかな」
色取り取りの花を見て、臨也は首を傾げる。
静雄は視線を花束に向けた。
中から一本取り出して、茎から花を千切る。
「これ」
白い花を臨也の頭に挿してやった。
「うーん、俺ら気持ち悪いね」
「手前が先にやったんだろ」
呆れたようにそう言って、自身から花を取ろうとする静雄の手を、臨也の手が掴んだ。
静雄は怪訝そうに臨也を見遣る。
「好きだよ」
臨也はまるで挨拶をするかのように軽くそう言って、静雄の頭から花を引き抜いた。静雄の目を見たまま、赤い花にゆっくりと口づける。
静雄はそんな臨也をじっと見て、軽く舌打ちをした。
「知ってる」
そう呟くと臨也の頭からそれを抜いてやる。
そして白いそれを握り潰した。パラパラと花びらが落ちる。
「シズちゃん酷いね」
臨也は口許を歪めて笑うと、静雄に口づけた。


100812 09:15
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