暗黙のルール






嫌がって逃げる体を押さえ付け、臨也は深くキスをした。
力は相手の方が強いけど、大体ここまで来ると諦めてくれる。静雄が力を抜いたのが分かった。
それでも押し付けた壁がガリガリ音を立てる。爪でも立てているんだろう。
その手を取って、背中に回してやる。すると、ぎゅ、としがみついてきた。
舌を絡ませながら薄目を開くと、相手が顔を真っ赤にして目を閉じているのが見えた。可愛らしい。
唇を離すと直ぐに拳が飛んできた。前言撤回。可愛くない。いや、可愛いうちに入るか。
拳を避けて、直ぐに距離を取る。相手の強大なる力には、一定の距離が必要だ。
「こわぁい」
「殺す」
自販機が飛んできた。本当に怖い。当たったら即死だろう。
「今日はここまでにしとくよ。またね、シズちゃん」
「待ちやがれ臨也!」
今度はバイクが飛んできた。ああ、こっわぁーい。
臨也は笑って逃げていく。
ある程度逃げれば静雄は追って来ない。暗黙のルール。
「キスの次はいつさせてもらえるかなぁ」
前途多難だ。


100812 08:30
×
- ナノ -