プロポーズ






カーテンを開けると青空だった。
まだ朝だってのに凶悪なまでに暑くて、静雄は舌打ちをする。
こんな朝っぱらから蝉は鳴いてるし、今日一日の猛暑を思うとウザったい。
静雄は着替えをする為にTシャツを脱いだ。体のあちこちに赤い印があるのに気付き、また盛大に舌打ちをする。
痕を付けるなと言っているのにいつもこうだ。
あー、もう!
まだ自分のベッドでぐうぐう寝ている男に、静雄は苛立ちを募らせる。
洗顔し、髭を剃り、いつものバーテン服に着替え、静雄はサングラスをかけた。
「もう行くの?」
目が覚めたのか、臨也がベッドから身を起こしてこちらにやって来る。
「ああ」
「辞めちゃいなよ、取り立て屋なんて」
「何言ってんだ、阿呆」
「俺が養ってあげるから、お嫁においで」
臨也はそう言って静雄に口づけた。
静雄は口づけを受け流すと、むにっと臨也の頬を掴む。
「馬鹿なこと言ってないで早く自分ち帰れ」
「痛い痛い!シズちゃん痛い!」
ジタバタと暴れる臨也の頬から手を離し、静雄は笑った。
「じゃあな」
「…いってらっしゃい」
パタンと閉じられるドア。臨也はそれを溜息を吐いて見送る。痛む頬を手で押さえて。
「本気で言ってるんだけどなぁ」


お嫁においで。


100811 08:16
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