//愛してるなんて言わせないで@おしり



「シズちゃんの涙って美味しいね」




夢を見た。
何年か前にたまたま泣いてしまったところを臨也に見られ、その涙を舌先で掬われてしまったときの夢。


そのときから臨也は俺を怒らすためにではなく、「泣かす」ためにいろいろ画策するようになった。


それは俺を精神的に追い詰めたり、傷つけたり、挙げ句の果てには無理矢理抱いたり、様々だ。

今日もまた俺は臨也に無理矢理新宿の家に連れ込まれ、身体を散々貪られた。
抵抗出来るはずもない。
俺は臨也が好きだから。


散々いいようにされて悲鳴を上げる身体を叱咤し、俺は後処理も何もされずに放置された身体を洗うために立ち上がった。

もうすぐ冬になる季節にYシャツだけ羽織り、裸足でフローリングを歩くのは冷たいが仕方ない。




リビングの前に立つと中から男女の声が聞こえた。
臨也とその秘書のようだ。もうそんな時間なのか。


「あなた、結局平和島静雄をどうしたいの?」


そんな会話が聞こえて俺は扉を中途半端に開けて固まってしまった。



「俺はシズちゃんの泣き顔が見たいだけさ。そこに愛も何もないよ。」

「家に連れ込むまでするくせに?」

「大嫌いな俺に抱かれて泣くシズちゃんが見たいだけさ!」



ふと禍々しいはずなのに、俺には綺麗に見えてしまうようになった赤い瞳と目が合った。
その瞬間臨也はいやらしくニヤニヤと笑む。



「けど、もう用済みかな?とりあえずもう抱いたりしないよ。とろとろな顔して涙流すシズちゃんは俺の見たいそれじゃない。」



その言葉を聞いて、俺は奥歯を噛み締め、寝室へと戻っていった。




完全に冷たくなったシーツに丸まっていると、クスクスと笑いながら臨也が入ってきた。

笑いたいのはこっちだよ、バーカ。



「お前、馬鹿だよな。」

「は?」

「俺、別にお前が俺をどんな言葉で蔑もうと、どんな酷い仕打ちされようと、手酷く抱かれようと、絶対泣かねえ…いや、泣けねえよ。」

「…何が言いたいの?」


不機嫌に眉を寄せる臨也を力強く見据えながら俺は言葉を続けた。



「俺をそんなに泣かせたいならな、」



『愛してる』って言ってみろよ。
そしたら、俺はその言葉が例え嘘だったとしても涙流すだろうよ。



そう笑ったら、臨也はその顔を思いっきり怒りの色に染めやがった。
お前も、そんな顔出来るんだな。



「ふざけるなよ、ふざけるな!俺は愛してるなんてシズちゃんに言ったりしない。絶対にだ。そんな、そんなことのために、」



【愛してるなんて言わせないで】





気付いてはいけない本当の気持ちに気づいてしまう呪いの言葉だから。




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