何で私はよりによってこいつを選んだのだろう、と目の前でだらしなく横たわる男を見ながら思う。

「小太郎は紳士で、高杉はイケメンで、辰馬は金持ちなのに。何で私こいつを選んだんだろう」
「おい、心の声ダダ漏れだぞ」
「心の声じゃなくてあんたに言ってんだけど」
「何で俺を選んだかって?そりゃ相性が良かったからだろ?」

コッチの。と卑猥に指を動かしながらニヤニヤしている。本当にしょうもないなこの男はと半ば軽蔑の眼差しで見るが、銀時は気にもせず話を止めない。

「だいたいよ、ヅラはああ見えて変態だし。高杉はいまだに鬼兵隊なんて中二臭い痛いグループ作ってるし。辰馬にいたっては性病だぜ?ホラ、俺が一番マトモじゃねぇか」
「三十路目前でクソニートのどこがマトモ?」
「ニートじゃねえ。会社社長だ」
「税金納めてから言えよ、社会のゴミ」
「俺だってそろそろ人生においてのログインボーナスがでるはずだ」
「あれ、とっくの前にログアウトしたと思ってたけど」

今日は新八くんと神楽ちゃんのために、美味しいケーキを買ってきたというのに。
そういえば前に神楽ちゃんが「食べ放題ツアー楽しみアル」と言っていたのを思い出した。
それが今日だったとは……行き場をなくしたケーキが冷蔵庫で眠る。

「せっかく並んで買ってきたのに…」
「だから、俺があいつらのぶんまで食ってやるって」
「絶対イヤ。あんたのために30分並んだって思うと全てが無駄に思える」
「お前って本当ひどいな、普通彼氏にそこまで言えるか?」
「わかんない。銀時しか付き合ったことないから」
「嘘ついてんじゃねーよアバズレ。高杉とヤってたくせに」
「すぐ高杉の事持ち出すよね。銀時って」
「…」
「妬いてんの?」
「うるせーよ」

銀時は不機嫌そうにジャンプで私を殴る。痛い。だってジャンプだよ。痛いに決まってる。負けじと蹴りをいれようとしたが、足ごと引っ張られ私の体は床にたたき落ちた。
そのまま苦悶の表情のまま床に横たわる私を、銀時は汚いにやけ面で見下ろしていた。

「あー…何か」
「なに」
「ムラムラしてきた」
「は?突然なに。意味わかんない。しかもまだ昼間」
「性欲が高まるのって実は昼間って知ってた?だから主婦が宅急便のお兄さんと不倫に落ちるわけよ」
「情報が古すぎじゃない?」
「ガキどもまだまだ帰って来ないわけだし…一発どうよ」
「え、えー…」

「なんだ、わりと嫌がってねーのかよ」

そう言い銀時は床に転がっている私を拾い上げ、ソファーに置く。
そして銀時自身もソファに沈む私の上に覆い被さり、唇が触れ合う。ふわふわと銀時の柔らかい髪の毛が顔に触れてくすぐったい。

「名前」

名前を呼ぶ銀時の顔が見えて
たまには昼間に抱かれてもいいかな。なんて思ってしまった。
とんでもない事も許せちゃうし。銀時となら、と私まで非常識になってしまう。きっと彼を選んだのは私自身常識が無いからなのだろう。

「みんな血眼で働いてるなかで俺らはセックスに勤しむって考えるとすげぇ興奮する」
「それ少しだけわかる気がする」
「だろ?ってことで、今日イくのちょっと早いかも」
「いつも早いじゃん」
「うるせ」

息継ぐ暇もなく唇を奪われ、私と銀時の興奮も最高潮に高まっていた。



「ただいまアルー!」
「あれ?この靴、名前さん来てるのかな?」

玄関から聞きなれた声…これは間違い無くあの子達の声だ。
先程まで火照っていた顔も体も一気に寒気が襲う。私も銀時も急いで乱れた着物を整え、
何もしてませんよ。セックス?こんな昼下がりに汚らわしい事するわけないじゃない。と言わんばかりの平然を装う姿は不自然そのもので、新八くんの疑うような目線が痛い。

「銀ちゃんただいまアルー」
「お、お、おかえり〜…どどどうした?ずいぶん早い帰りじゃねーか?」
「神楽ちゃんが来週と日付間違えたみたいで…」

昼下がりの情事は来週へと延期になり、皆でケーキを食べる中で銀時だけが前屈みになっていた。