「なぁ、知ってるか?」
「何だよ突然」
「あ、面白い話? だったらあたしも混ぜてよ」
「面白いってわけじゃねぇけどさ……。お前等、この学園の消灯時間のこと知ってるだろ?」
「当たり前だろ。そのせいで屋内部活は消灯時間までしか活動できないんだから」
「屋外部活は七時とかまでやってたりするのにねぇ」
「ちょっと理不尽だよな」
「まぁ俺が言いたいのはそういうことじゃなくて。……何でこの時間なのか、そこまで知ってるか?」
「んなの知らねーよ。学生手帳やら部活動の注意目録に書かれてるわけじゃあるまいし」
「……もしかして、あの噂?」
「なんだ、お前知ってたのかよ。つまんねーの」
「噂ぁ?」
「知らないの? ……この学園、昔はお墓だったところに建ってるらしいの。ほら、そういうところに後続で建った場所って、出るとか言うじゃない? だから例に漏れず、此処もそうらしいって」
「具体的には?」
「確か……消灯時間を過ぎても校内に居ると、鈍器を持った人影に追いかけられるってやつだったかな」
「俺が聞いたのもそんな感じだな。校内だけじゃなくて、下駄箱前とかでもアウトらしいけど」
「鈍器持った人影って……普通に事件起こしてる奴もそんな感じじゃん。前に校内に不審者入ったことがあったっていうし、そのときの話が大きくなっただけじゃねぇの?」
「あれも結局はあたしたちが憶測で言ってるだけで、ほんとがどうだったのかはわからないままだよね。よくあるダミー放送もなかったわけだし」
「まぁ現実的な話は置いといて。お前たちには俺が極秘裏に手に入れた回避方法を教えてやる」
「何なにー?」
「一階の工作室。あそこ、その人影の墓だった場所らしいんだよね。その名残か何なのかわからねぇけど、教室の後ろの方にちっちゃい祠っぽいやつあるじゃん? あれにお願いすると退散してくれるんだとよ」
「ほーん。そりゃまたご都合過ぎるというか定番というか」
「でも工作室なんかに祠がある理由としてはそれっぽい?」
「それっぽくたってマジな話なわけじゃねーだろ。確かめた奴が居るわけでもなし」
「そりゃそうだけどさぁ。いーじゃんかよ、ちょっとぐらい話に乗ってくれたって」
「それはそうと、その噂がどうしたの? まさかほんとに遭ったとか……!?」
「ちげーよ! 遭遇してたらもっと話言いふらしてるっつーの!」
「じゃあ何だよ」
「……別に。ただちょっと、そういう話をしたくなっただけだよ。そろそろ夏だしな」
「納涼をお求めならプールにでも行ってくださーい」
「だな。あーあ、真剣に話聞いて損したぜ」
「何だよ、折角話してやったってのによ。お前等が巻き込まれてもぜってー助けてなんかやらねぇからな!」