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ノッブの女(FGO)





沖ノブに近い何か
深く考えたら負け



「私だってノッブをドキッとさせて沖田さんの夢女子にさせたいんです〜〜〜!!!!」
「朝っぱらから何言っとるんじゃこの人斬り」

 わなわなと作った拳を震わせていると、心底理解できないと言いたげな顔のノッブに鼻くそをつけられそうになった。朝から鼻ほじってるのもどうかと思いますし、私をティッシュペーパー代わりにしようとしているのもどうかと思うんですけど!

「お前寝不足か?? 寝不足なんじゃろ?? はよ二度寝してこい。マスターにはわしから話をしといてやるから」
「そうじゃありません!」
「あっすまんの、寝不足じゃなくて不治の病じゃったか、頭の」
「沖田さんの不治の病は労咳だけです〜〜〜!!!!」

 コフッとわざと咳をしてみたら、ちょっとだけ赤いものが出てきた。おっといけない。お汁粉を食べ終えた子供のように口元を拭って、じゃあのと居なくなろうとするノッブの外套を引っ張った。

「ぐえっ!? おい馬鹿何するんじゃ!!」
「少しは真面目に話を聞いてください!!」
「不真面目な話をしてるのはお前じゃろ!!」
「ノッブ、貴女いつまで自分が左側だと思ってるんです……? 時代はノブ沖じゃなくて沖ノブなんです!! そう、ノッブが右側!! いつまでも「ノッブの女になっちゃう〜!」なんて全国のマスターに言わせたりなんてしませんからね!!!!」
「謎電波拾いすぎじゃろお主」

 呆れたノッブはくありと欠伸を零して、今度こそその場を去ろうとする。まだ私の話は終わってないんですけど! というかその余裕綽々な感じがすごい腹立つんですけど! 皆さんこんな淡白な人のどこがいいんですか!? やんややんやと喚いている私は、ノッブが心底鬱陶しそうな目で此方を見ていることなんか知らない。その目がじとりと、どことなく苛立っているのも。そうとも知らず騒ぐ私の耳に、一際大きな溜め息が聞こえてきたかと思えば。

「はぁ……五月蝿いのう、なぁおき太よ」
「何ですノ……」

ッブ、と言い切る前に、ドン! と壁に叩きつけられた手の音と、ノッブとの距離に、思わずはへ、と間抜けな声が出た。こっ、こっ、これは、噂の壁ドン(語弊ver.)〜〜〜!?!?!? 私より小さいノッブがちょっとだけ此方を見上げながら睨む表情に、私は柄にもなくドキッとしてしまった。く、悔しい……これじゃあ沖田さんがノッブの女になっちゃうじゃないですか……!!

「の、ノッブ! やめてください! ステイ! 私をノッブの女にしないでください!!」
「阿呆なことばかり言っとるでないわ。ほら、食堂行くぞ」

 するりと私の頬を撫でてにかりと笑うノッブが眩しい。くぅう〜〜〜……私は絶対屈したりしない……!! しな、しない……!!(ノッブから視線を逸らしながら)

「おうおう? 顔真っ赤じゃぞおき太〜。照れとる? 何に? ワシに?」
「ああああああもうそういうノッブが嫌いだけど好きです!!!!!!」
「面倒な割に素直じゃな!!」




2019/03/07


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