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ロウガとタスクが幼馴染みパロディ(BF)






何が来てもいい人向け。十割ギャグ。
タイトルの通り。




 品行方正、文武両道、眉目秀麗。龍炎寺タスクという少年を取り巻く評価は、大体その四字熟語になる。尤も同年代の男子からは「嫌味なほどイケメンなくせに、それを鼻にかけないのがさらに嫌味ったらしいはずなのに許せてしまう」とか、女子からは「色々語りたいけど一言に要約するならまさに王子様」なんて言われているが、それは本人の知らぬところであるので割愛しよう。
 それらが幻想であることを知ったなら、人一人くらいは朦朧としたまま死んでしまうかもしれないなどと、彼の幼馴染みであるロウガは時たま思う。今だって、外での王子様面はどうしたと言わんばかりに机の向かいで突っ伏しているのだ(どうせ見えない顔もこれ以上ないぐらい不細工なものだろう)。間違っても、外ではこんな姿を晒すことはないはずだ。少なくとも、ロウガの記憶にはない。

「おい、解けたのか」
「うぐ……ぐっ……」
「俺も自分の時間があるんだ、お前にだけ構っていればいいわけじゃないことぐらい理解しろ」
「じゃあ代わりに解いてよ……」
「それでは貴様のためにならん」

 ちらりと横を向いた顔はやっぱりむくれていて、これも世の女性が見ればギャップでかわいいなどと持て囃されるのだろうが、生憎ロウガにはまたふてくされて不細工面をしている程度にしか思えなかった。進まぬ課題に痺れを切らせて立ち上る素振りを見せると、俊敏な動きでがたたっと先に立ち上がったタスクが、ロウガの腰に思いきり腕を巻き付けた。駄々をこねる図の完成である。

「待ってよ! やる、やるから! 頑張るから! ていうか頑張ってるだろ現在進行形で!!」
「ええい鬱陶しい! スーパーで食玩を強請る餓鬼か貴様!」
「だっでぇ……!」
「……っ、だったらさっさとそこに直れ! 次に弱音を吐いたり机に伏せてみろ、あとは知らんからな!」

 根負けと云うべきか、情に流されたと云うべきか。服が伸びるとタスクの手をひっぱたき落とす。別段痛がる素振りもないまま、ぱぁっと神様でも見つけたんじゃないかというぐらい大袈裟に顔を輝かせたタスクは、早く早くとロウガの座っていたまだぬくい座布団をぽすぽす叩く。現金な奴だ、とロウガは嘆息するが、結局は大人しく其処に落ち着くのであった。




「ただいま暑い」
「帰宅の言葉ぐらいまともに言わんか。そもそも此処はお前の家ではない」

 べたーっと我が物顔で荒神家の玄関に溶ける青色の物体を足下にしながら、家主のロウガはそう吐き捨てた。尚もそれは暑いだの水だのと聞き苦しい声で呻きながら呪咀を紡いでいる。ぐに、と背中に体重をかけると途端に声音は苦痛に変わった。

「君馬鹿じゃないのか!? 疲れて帰ってきた学生になんて仕打ちを!」
「俺も学生だが」
「君は帰宅部だろ!」

 喚く顔をぐにぐにと爪先で詰ってやれば、耐えかねたのか漸く身を起こした。

「さっさと風呂にでも入ってこい。汗臭い身体でうろつかれてはたまらん」
「えっ、まさかお風呂入れてくれてたり……」
「そんなわけあるか。シャワーだシャワー」
「知ってた!!」

 わーん! とわざとらしく泣き真似をしながらバスルームへと消えていく幼馴染の姿を億劫そうに見つめたロウガは、火にかけたままの鍋のことを思い出してそそくさとキッチンへ引っ込んだ。どうせ、そのまま夕食まで食べていくに決まっているのだから。

「ちょっと! 着替え貸してほしいんだけど!」
「まったく面倒な奴だな貴様は!」
「いたっ! もう少し優しく渡せないのかよ……うわ……」
「なんだ、物悲しそうな目をして」
「……いや、当たり前といえば当たり前なんだけどさ。君、細身に見えて意外とでかいんだね……」
「裸で外に転がすぞ」




 ロウガが勉強に集中しだしたとき、決まって彼は窓を叩いてやってくる。鍵を開けっ放しにしている自分も大概なのだが、以前閉めたまま無視した結果、被害が甚大になってしまった過去があるため、諸々を守るためにロウガの部屋のプライバシーは開け放たれている。彼の人権はことあの男に対しては無に等しかった。
 今日もまたコンコン、と申し訳程度の遠慮を鳴らしたのち、我が物顔で窓を開けてタスクが入室してきた。入室といっても、部屋に遊びに来たというよりは、泥棒が侵入してきたかのような入室方法だが。

「やぁ」
「…………」
「あはは、来ちゃった」
「…………」
「でもさ、仕方ないよね。……僕、君に会いたくて仕方なくて、だから、さ……」
「少女漫画の相手役か貴様!」

 鬱陶しい茶番にシャープペンを机に叩きつけてしまった。跳ねていったペンを回収しつつタスクを見れば、なんとも楽しそうに鼻歌を奏でながら棚の小説に手を出していた。無論、やめろと言ったところで素直に言うことを聞くわけもないので、小言を飛ばすのは既に諦めている。

「百歩譲って侵入してきたことは不問にしてやる。用件は何だ? まさか俺の部屋を物色しに来たわけではあるまい」
「そうだって言ったら」
「今すぐにでもベランダから突き落とす。金輪際うちの敷居は跨がせないぞ」
「それで僕が死んだらどうするつもり!?」
「それはそれだ」

 頑として譲らないロウガに、おふざけが通用しないと理解したタスクは、渋々といった様子で持参したナップザックの中からノートと教科書を数冊取り出した。

「教えて!」
「帰れ」
「ご無体な!」



私タスク先輩に優等生イメージはあるんですけど、なんか「=勉強できる」っていうイメージ全然なくて。正史の彼なら本来の意味の優等生なんでしょうけど、パロディとかパラレルワールドではだめんずタスク先輩とかアリなんじゃないかなと。




2018/09/13


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