24時間ずっとは疲れそうだ | ナノ


24本の赤い薔薇


※ご注意
・安定のコレジャナイ感
・ところどころ、本編とは違った部分が見受けられます
・たぶんこの子達は寮生活だと思う、という考えから来る捏造
・少女マンガじみた甘ったるさかもしれませんので、ご注意ください
・後日談の部分は若干トレケイ風味かもしれません。苦手な方は回避お願いします。




 放課後になってから、0組の皆さんに誕生日を祝ってもらいました。パーティまで開いてもらって、わたしは幸せ者です。五日後には、ナインさんの誕生日パーティが控えていて、うれしいことが続きます。いいことです。
「よいしょっと……」
 自分の部屋に戻り、いただいたプレゼントをテーブルに置き、ようやく一息つきました。これは誰からのプレゼントで、こっちは……とひとつひとつ渡されたときのことを思い出していると、あることに気づきました。
「ひとつ……足りませんね」
 そういえば、エースさんからは何も渡されていない気がします。パーティの間にお話をする機会はあったので、もらいそびれたということではないのでしょう。
「そもそも、必ずプレゼントがもらえると思い込んでいる方が間違っていますね」
 エースさんにも、きっとプレゼントを用意することができない理由があったのでしょう。わたしに彼を責めることはできません。それでも、少しショックなのは確かです。
「本当は一番楽しみに……していたんですけど」
 祝ってもらったうれしさと、楽しみにしていたものがなかった寂しさとが混ざった、この複雑な気持ちを吹き飛ばすために、今日はもう寝てしまいましょう。そう決めたときに、部屋のドアが控えめにノックされました。
「誰でしょう、こんな時間に」
 もしかしたら、わたしが教室に何か忘れ物をしていたのに気づかなくて、誰かが届けにきてくれたのかもしれません。あわててドアを開けると、そこにいたのは────
「え、あれ、エースさ──わあっ」
 目の前に立つ彼の右手には、真っ赤な薔薇とカスミ草がきれいに飾られたバスケット。
「こんな時間にごめん。改めて、誕生日おめでとう、デュース。これ、プレゼントなんだけど……」
「すごくきれいですね。パーティのときに渡してくださったらよかったのに……皆さんにも見せたかったです」
「それなりに大きいし、置き場所にも困るだろうと思って。それに、あの場で渡すのは僕としても困るというか……」
「どうしてですか?」
 と聞けば、エースさんは別に気にするほどのことでもないよ、と笑いました。何なのでしょう、気になります。ふと、視線を下に向けると彼の左手にも何か小さな箱。
「そっちの箱は?」
「これは……いや、なんでもない」
「わざわざ持ってきたのでしたら、なんでもないことはないでしょう?」
「……中身はケーキなんだけど、さすがに時間的な問題でそういうものを渡すのはまずいかなって。女性は特に気にする人が多いし」
 確かに夜遅くの飲食は、体重という面で気になってしまいます。でも、せっかくのケーキを無駄にするわけにも行きません。うむむ、と考えて、わたしは結論を出しました。
「今日は特別です!」
「そうか、じゃあこれも──」
「エースさんも入ってください。紅茶くらいなら、出せますし……」
「いいよ、遠慮しておく。もう時間も遅いし、早く戻らなきゃ──」
「ダメです!」
「ダメって……こんな時間に僕がデュースの部屋に入るほうが、その、ダメなんじゃないのか?」
「私がいいって言ってるから、いいんです!」
 渋るエースさんの腕を引き、無理やり部屋の中へと招き入れました。そのままドアを閉めると、エースさんは観念した様子でため息をつきました。
「……お邪魔します」
「今、準備しますね」
 彼を案内してから、わたしはキッチンへと向かい、ケーキをお皿へと移します。お湯を沸かして、紅茶の準備も忘れずに。好みがわからないので、とりあえずミルクと角砂糖は別途で用意して……さっきいただいたお花は、後で置く場所を考えましょう。
「おまたせしました」
「こういうのは、本来僕がすべきことだよな……」
「いいんです。今日はたくさんのことを、皆さんからしてもらいましたから」
「そう、だな」
 それからいろんなことを話しました。今日のパーティのこと、この前の作戦であったこと、紅茶の好み、ケーキの話。他愛もないお話、だけどとっても素敵な時間。
「でも、うれしいです。こうして、二人だけで誕生日を過ごせるとは思っていませんでしたから」
「デュースは大勢でにぎやかなのは、苦手なのか?」
「いえ、嫌いではないですけど、やっぱり大切な人と一緒にいるほうが幸せだなって。皆さんに知られたら、怒られちゃいますね」
 だから内緒です、と付け加えると、考え方は人それぞれだからな、とエースさんは笑いました。その顔がなんだかとてもうれしそうで、わたしもつられて笑顔になります。
「僕も、こうして一緒にすごせてよかった。紅茶、ご馳走様。もう日付が変わってしまうから部屋に戻るよ。夜遅くまでつき合わせてごめん」
 言われて時計を見ると、針は0時の3分前をさしていました。すっかり話し込んでしまっていたようです。本当は、もう少し一緒にいたいけれど、そんなわがままは言えません。わたしだって、早く寝ないと明日に響きます。
「いいえ、気にしないでください。今日は、ありがとうございました!」
 それでもやっぱり名残惜しくてドアまで見送ると、前を歩くエースさんは急に振り返って額にそっとキスをしました。
「おやすみ、デュース」
「え……」
 そう言って笑う姿がドアの向こうに消えるのを、呆然と眺めることしかできなくて。そんな私をよそに、0時を告げる時計の鐘が響きました。



 後日、花の世話の仕方を聞きそびれたので、教えてもらおうと思ったのですが、エースさんの姿は見当たりません。トレイさんならご存知かもと思い、彼にたずねることにしました。横にいたケイトさんにも昨日の出来事をかいつまんで話しました。
「へえ、そんなことがねぇ。だから、パーティのときにプレゼント渡さなかったんだ」
「ふむ、真っ赤な薔薇……ですか。デュース、薔薇の本数は覚えていますか?」
 頭の中に思い浮かべて、本数を数えてみます。どれくらいだったでしょうか。
「たぶん、20本はあったと思うのですけれど」
「では、たぶん24本でしょうね」
 そう言ってから、何が面白いのかトレイさんは笑い始めます。わたしとケイトさんには、理由がわかりません。
「ちょっと、何が面白いのよ」
「薔薇だけに限らず、どの花にも花言葉があることはご存知でしょう? しかし薔薇は、相手に贈る本数にも意味があるんですよ。もちろん諸説ありますが、1本なら私にはあなたしかいない、3本なら愛しています、といった風にね」
「それで? 24本の意味が面白いってこと?」
「24本なら、いつのときもあなたが恋しいといった意味があるはずです」
「……何それ素敵! ロマンチック! 愛されてるねぇ、デュース!」
 いつのときもあなたが恋しい。あのプレゼントにそんな意味があったなんて。
「それにしても、エースも面白いことをしますね」
「どっかの誰かさんみたいに、回りくどい気もするけど?」
 それを皮切りに言い合いを始めた二人に、心の中でお礼を言ってわたしは自分の席へと戻ります。エースさんがパーティ中にあの花を渡せなかったのは、その場で私以外に意味を知られると恥ずかしかったからでしょうか。現にトレイさんは見事に隠された意味を読み解いてしまったわけですし、なんだかそんな気がします。
「この後、どんな顔をして会えばいいのでしょう……」
 やっぱり、エースさんはずるいです。



あとがき
2011年のデュースちゃん誕生日祝いに書いたもの。
エースさんはこういったキザなこととか、割と臆面もなく
やってくれそうな気がしています。王子様だから(←



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