理由はなんとなくで十分 | ナノ


「好き」の理由とは


※ご注意
・安定のコレジャナイ感
・ところどころ、本編とは違った部分が見受けられる恐れがあります
・少女マンガじみた甘ったるさかもしれませんので、ご注意ください
・「ふいんき」は仕様です




 珍しくテラスに出てみた。魔導院に来てからそれなりに経ったが、普段なかなか足を運ぶ場所ではないだけに新鮮な気分だ。天気もよく、吹き抜けていく風が心地いい。
「本当は、クリスタリウムで探したい資料があったのですけれど」
 だが、そうは行かない。きっとあそこでは、彼に見つかってしまうだろうから。
「……とはいっても、院内のいける場所は限られていますし、これからどこに行けば──」
「こんなとこにいたのか」
 声をかけられて、思わず肩がはねる。ここなら大丈夫だと思ったのに。
「ナイン……どうかしたのですか? 珍しいですね、こんなところに」
「それはお互い様だろうが」
 彼が怒っていることは雰囲気から容易に知れた。良くも悪くも、わかりやすい人間だから。
「おまえ、最近俺のこと避けてねぇか?」
「……そんなことありませんよ」
「じゃあ、何で前よりも魔導院で顔あわす機会が減ってんだ、オイ」
「さあ……偶然ではありませんか?」
「んなわけねぇだろ。こっちは心当たりのある場所を片っ端から探し回ってるんだぜ?」
 その言葉で、うれしくなると同時に申し訳なくなった。もちろん、ナインと会わないのは偶然などではない。自分は今、彼のことを避けているのだから。
「どういうつもりなんだよ、あぁん?」
「それは……」
 言うべきか、言わざるべきか。しかし、言わないことには彼は納得してくれないだろう。
「あんだよ?」
「それは……怖いからです」
「……俺のふいんきの話なんて今更だろ」
「そうではありません! このまま、先に進んではいけないような気がするのです……」
「……は?」
「私にはまだ『好き』にいたる理由が見つけられないでいるから……」
 ナインはいつだって、まっすぐに自分のことを思ってくれている。それなのに自分は彼の何がどう好きなのかさえ曖昧で、こんな状態でいることはきっと向けられる思いに対して失礼だ。本を読んで得た知識は、この問題を解決する役に立ってはくれない。うつむいていた顔を上げると、すぐ目の前まで彼は近づいていた。
「だから────っ!?」
 以前よりも乱暴なキス。しばらくして唇が離れ、彼はそのまま言葉をつむぐ。
「好きになることに理由が必要だって、おまえの大好きな本にでも書いてあったのかよ」
「え……と、そういうわけでは……」
「理由もなく人を好きになるのが悪いってのか」
「……」
 そんなはずはない。でも、それではいけないのだ。理由がなければ。自分は彼のようには、きれいに割り切れないから。
「まあ、なんだ……おまえが納得できないなら、その、仕方がないのかもしれないけどよ」
「ごめんなさい……」
「謝るようなことでもねぇだろ。それに──」
「それに?」
「その理由が何だろうと、俺はおまえを離す気はねぇしな?」
 そのまま、にやりと不敵な笑みを作る。
「……そう、ですか」
「んだよ、その間は」
「いいえ、特に意味はありません」
 なんとなく、理由がわかりそうな気がした。




あとがき
こちらもフォロワーさんのお誕生日祝いに書かせて
いただいたものに、ちょこちょこ手を加えたものに
なります。

ナイクイちゃんかわいいです……しかしながら
クイーンちゃん視点で地の文を書き進めると、なんと
なーく一人称を混ぜることに違和感を感じてしまう
のでした。わたくし……。



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