ナイクイちゃん難しいです | ナノ


誕生日プレゼントのお話


※ご注意
・初めて書いたせいもあってか、安定のコレジャナイ感
・ところどころ、本編とは違った部分が見受けられます
・たぶんこの子達は寮生活だと思う、という考えから来る捏造
・少女マンガじみた甘ったるさかもしれませんので、ご注意ください
・周囲も知っている恋人同士です。
・「ふいんき」は仕様です。




「何だこれ」
 かったるい授業が終わってから、ちょっと教室を出ている間に中のふいんきがすげぇ変わってた。ぼけーっと突っ立ってる俺が邪魔だといわんばかりにケイトがにらんできた。
「入り口前で突っ立ってるくらいなら手伝えっての!」
「いや、いきなり手伝えとか言われてもどうしようもないだろ」
「前々からクイーンの誕生日パーティをするって言ってたでしょ? あ、もしかしてナイン、忘れてたとか?」
「いや、それは忘れてねぇけどよ……こんなに規模がでかいとは思わなかったぜ」
 リフレッシュルームに売ってる食べ物と結構な大きさのケーキが机に並べられている。
「何言ってんのよ。シンクのときもこれくらいだったじゃない」
「それは忘れた。つーかよぉ、肝心のクイーンはどこにいんだ?」
「今、デュースが呼びに行ってる。もうすぐ来ると思うわ」
 ほら、アンタもこれ持って! とクラッカーを渡され、ドアの左右にできた列の中に押し込まれる。向こうから、小さく声が聞こえてドアが開いた。
「クイーン、誕生日おめでとう!」
 一斉に鳴らされたクラッカーの紙ふぶきをかぶったクイーンは、ありがとうございます、と笑った。
「先に聞くの忘れちゃってごめんね。ケーキ焼いてみたんだけど、クイーンは甘いの大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「クイーン、これアタシからのプレゼント!」
 主役の周りには、あっという間に人だかりができた。プレゼントを渡す奴、話をする奴。俺はそこから少し距離をとって、机の上の食べ物を消化していた。
「ナインは、混ざらなくていいのか?」
 振り返ると、両手にケーキの載った皿を持ったセブンが立っていた。
「別に混ざったって何もねえからな。プレゼントも……買うの忘れちまったし」
「ナインが? 珍しいな。任務よりもクイーンのことを第一に考えてるとばかり思っていたのに」
「このところ外に出てる余裕なんてなかっただろ。まあ、結局は何を言ってもただの言い訳になっちまうんだけどな」
「忘れてしまったものは仕方がないさ。素直に謝れ」
 そういって、ケーキの皿を差し出される。
「その様子だと、まだケーキは食べてないんだろう? せっかくレムが作ってきてくれたんだ。食べてやれ」
「……おう」
「大丈夫だ、そこまで甘いわけじゃない。ナインでも平気なはずだ」
 セブンが言うなら、間違いないんだろう。一口食べてみる。美味い。
「お前たちは本当に素直じゃないな。見ているこっちが心配になるくらいだ」
「ちょっと待て、何の話──」
 俺の話は、勢いよく開けられたドアの音に止められた。
「間に合った〜!」
「……シンク!?」
「シンクちゃんもプレゼント作ってきたよ〜」
 そういって、シンクがクイーンに差し出した皿に載っていたのは……何だあれ?
「えっと……失礼ですがシンク、これは?」
「シンクちゃんお手製のケーキだよ〜」
「そ、そうですか? なんだか、ケーキにあるまじきものが入っているような気がしますが……」
「そんなことないよ〜? ささ、クイーン。一口でどうぞ!」
 食べたらどうなるのかなんて、馬鹿な俺にだって簡単にわかる。体は反射的に動いていた。二人に近づいて、シンクから皿をひったくる。抗議の声が聞こえたが、無視だ。そのまま、ケーキを口に放り込んだ。よくわかんねえ味して、何とか飲み込んだけどそれがやっとだった。



「んあ……?」
 何が起こったのか、ぜんっぜんわかんねぇ。周りが静かだから、パーティはもう終わっちまったのか?
「ナイン!?」
「あぁ!? 何でクイーン──」
「だめです、まだ起きないでください」
 起き上がろうとしたら、止められた。よく見たら、教室じゃなくて俺の部屋じゃねぇか。
「びっくりしたんですよ。ナインったら、いきなり倒れるんですから」
「俺が!?」
「まったく……人へのプレゼントを盗ったうえに、勝手に食べるから何事かと思いました」
「待てよ、それは」
「守って、くれたんですよね?」
 ありがとうございます、と伏目がちに礼を言われた。
「おう……こっちこそ、心配かけて悪かったな」
「いいえ……」
「んなことより、パーティはどうなったんだよ、オイ」
「ずいぶん前にお開きになりました。キングに頼んで、あなたを部屋まで運んできてもらったのです」
「何だよ、他の奴らは人がぶっ倒れたってのにシカトかよ、コラァ」
「そんなことはありません。みんな心配していましたし、シンクのこともちゃんと叱っておきましたから」
 後でキングに礼を言うのを忘れないようにと言われて、さすが委員長だな、なんて考える。そこで、ふと思い出した。最初からずっと感じていた申し訳なさの原因を。
「あー、しまった……」
「何がです?」
「プレゼント……ねぇんだわ」
「え?」
「任務でバタバタしてたら、すっかり忘れちまった……わりぃ」
「……そうですか」
 てっきり、いつもみたいに怒られるのかと思っていたから、その反応にびっくりした。言葉にも、ふいんきにも普段の強さがない。抱え込んで、強がって。溜め込んだそれが表面に出てくるなんてのは、相当なときだ。俺は飛び起きる。
「ナイン! 起きてはいけないと──」
「うるせぇ!」
 その勢いのまま、クイーンを抱きしめた。一瞬こわばる体の小ささを改めて知る。
「な……んなんです、急に!?」
「今日のところは、これで勘弁しやがれ」
「……嫌です。これじゃあ、いつもと何も変わりません」
 そう言って体を離し、だから、と続ける。
「プレゼントを見に行くときは、私も一緒に連れて行ってください」
「それじゃあ、意味がないだろ」
「プレゼントがなくてもいいんです。久々に二人で出かけたいんです」
 言い切ってから、クイーンは顔を赤くしてうつむいた。その様子があまりにかわいくて、もう一度抱きしめる。
「……わかった、約束な」
「必ずですからね」
「遅くなっちまったけど、誕生日おめでとうな、クイーン」
「ええ、ありがとうございます、ナイン」
 なんだか妙におかしくて、互いに笑いあう。そのまま、どちらからともなくキスをした。




あとがき
2011年のクイーンちゃんの誕生日祝いに書いたもの。
まだまだナイクイのイメージが固まらないまま、三日くらいで
突貫工事をした記憶があります。どちらかというと、これは
力関係にあまり差がない感じがしますね……。



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