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その後、数時間に及んで何回戦かしたものの、イカサマ無しのアレンは"アンラッキーボーイ"の異名のままにボロ負けし、ソファで撃沈していた。


『ふはは!オレの勝ちぃー!』


最終試合の後、手元にある大量のチップを満足気に眺めるライは、そんなアレンに向かってピースサインをしている。


「アレンてイカサマないとほんとに弱いんだな…」
「あはは…」
「ライの運が良すぎるんですよ!」


アレンの言う通り、ライに回るカードはことごとく良いカードばかりで、毎回トントン拍子でチップを増やしていったのである。


『ほら、子供だから神様が手伝ってくれたんだよ、たぶん』
「中身は16だろうが」
『今は子供だもんねー!』


んべ、と神田に対して舌を出すライは今の容姿にぴったりとハマっていて、良くも悪くも年相応の少女の様。


『てことで、勝者から敗者に罰ゲームだ!』


そう言い放ったライにアレンがえっと声を上げる。


「聞いてないですよ!?」
『今思いついた!』
「……なんかライ、ホントに子供みてぇじゃね?」
「ほんと、可愛いわよね」


そんなことをラビとリナリーが話しているのも露知らず、うーんと考えたライが何かを思いついたようにアレンの服を掴んだ。
悪戯っぽくにっと笑うと、


『肩車して!アレン兄ちゃん!』
「「「「!!?」」」」


アレン兄ちゃん……
…アレン兄ちゃん………アレン兄ちゃん………


「え、これご褒美ですか?」
『えっ、罰ゲーム…じゃないの…?』


ライの肩に置かれるラビの手。


「ライ、肩車ならラビ兄ちゃんがいくらでもしてやるから、アレンにはもっと別のを考えるさ」
「おい変態兎、コイツに触るな阿呆がうつる」
「ちょ、ヒドくね!?っていうか参加してないユウにどうこう言う権利なんてないさ!」
「この場に居ただろうが」
『え、ちょ、』
「ちょっと二人とも!そもそも僕とライの話なんですけど!?」


ラビと神田(+アレン)がライを挟んで静かに睨み合いを始めれば、その間でライは困ったように口を開けたり閉じたりを繰り返す。
アレンと神田の睨み合いなら日常だが、珍しいラビと神田の睨み合いにどうしようか悩んでいるようだ。


「ライ、ちょっと…」


そんなライにリナリーがこそりと何かを囁いた。
ええ、と眉を寄せるライだったが、リナリーにくるりと体を反転させられると小さくため息を吐く。
ライはリナリーの言う通り、二人の服の裾を引っ張って、


『あの……ラビ兄ちゃん、ユウ兄ちゃん…喧嘩はダメ、だよ…?(なんでオレが罰ゲームみたいなことしてんの?おかしくね?)』


ピシッと固まる二人に、後ろからリナリーがクスクスと笑う声が聞こえる。


「ほら、ライもそう言ってるでしょ。てことで、はい、アレンくん」
『わ、』


動かなくなった二人の間からライを攫うようにしてアレンへと押し出した。


「アレンお兄ちゃんに肩車してもらいなさい」



* * *



『うおー!高ーい!』
「しっかり掴まっててくださいね」


アレンの頭の上で楽しそうにはしゃぐライ。
普段歩きなれている教団の廊下も、目線が変われば景色も変わる。
あの後、小腹がすいた一同は昼食をとりに食堂に行こうという話になり、ライはアレンに肩車をしてもらったまま移動することになったのだ。
そのことに最初はごねていたラビだったが、嬉しそうなライにつられたのか今では微笑ましそうにその光景を眺めている。


「なんか、ライの素が見れたって感じさね」
「ふふ、そうね。普段気を張ってる分、今だけは本当の子供みたいに過ごしてもいいんじゃないかしら」


そんな、親目線のような会話をしながらアレン達の後ろを着いて行くリナリーとラビ。
その数歩後ろを神田が黙々と歩いているのだが、ちらちらとライを気にかけているのは誰も知らない。
食堂に到着すれば朝とは違った好奇の目が寄せられるが、ライはもう気にしていないようだ。
まず人数分の席を確保してからぞろぞろとジェリーの元へと向かえば、昼時なのもあってジェリーは忙しそうに厨房とカウンターとを行ったり来たりしている。


「さあ、お次は何かしら!…アラん!?」
『よ、ジェリーさん』
「こんにちは」
「んまァーっ!アナタ達、兄妹みたいね!」


可愛いわァ、と顔をほころばせるジェリーに、ライよりもアレンが照れくさそうに笑う。
そしてそれぞれが注文を終え、ライが口を開いた時、


「ライ、アナタのは任せて頂戴!」
『へっ?』
「とびっきりのモノ、作ってア・ゲ・ル」


ばちこーんとウインクをされれば、よく分からないまま頷くライ。
そんなこんなでとりあえずアレンに降ろしてもらい、少し待ってから渡されたものは…


「あら!」
『こ、これは…お子様のやつでは…?』
「可愛いですね!」
「メッチャ美味そうじゃんか!」


まず目がいくのは小さなピラフの山に立てられた旗。
そして、瑞々しいサラダに添えられたポテトサラダに、くるっと丸められた卵焼きに刺さる子供用のピック、食後のプリン……と、どう見てもお子様ランチだった。


「一度作ってみたかったのよン!こういうのっ」


頬に手を当てながらくねくねと嬉しそうに言うジェリーに悪い気はしないし、そもそも美味しそうだし、なんと言ってもこの歳になって食べる機会があるとは思っていなかった為、若干恥ずかしそうではあるがお礼を言いながら受け取ったのだった。


『……侮れないな、お子様ランチ…』


食後、空になったプレートの上で、ピラフに刺さっていた旗をくるくると回しながらライが言う。


「幸せそうに食ってたなぁ、ライ」
『だって普通にジェリーさんの料理美味しいんだもん』
「何作っても美味しいって凄いですよね」


アレンの言葉にうんうんと頷きながらお茶を飲んでいたライだったが、突然、思い出したように声を上げた。
どうしたのかという視線が突き刺さる中、行きたい所がある、と言うライ。
とりあえず食べ終わったものを返却し、ジェリーにご馳走様を言ってから食堂を出れば、ライはラビに両手を伸ばす。


『次は、ラビ兄ちゃんが肩車!』
「なっ、」
「!お兄さんに任せるさ!!」


目を丸くする神田の横で輝かんばかりの笑顔をライに向けるラビは、ひょいっとライを持ち上げると軽々と自身の肩へと乗せた。


『うわたっか!どっかに頭ぶつけない?これ』
「ライ、何だかんだ楽しんでますね…」
『もうこの際全制覇しようかなって』


もちろん次はユウだからな、と高いところから見下ろされた神田は心底嫌そうな顔をすると、くるっと方向を変えその場から去ろうとする。


『リナリー!ユウ捕まえて!』
「ふふ、はいはい」
「お、おいっ…!」
「そういう事だから、神田?逃げちゃだめだからね」


がしりとリナリーによって腕を掴まれた神田は、振り払うことも出来ずにただただ諦めのため息をついた。


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