教団の外にある静かな森。
早朝、そこで神経を研ぎ澄ませ一人鍛錬をしているのは、神田ユウ。
目隠しをした神田は、六幻を片手にじっと動かない。
静かな時間の中、小さく風が吹いた。
突然、息を短く吐いたかと思うと、神田は六幻で自身の周りを落ちる木の葉を全て切り裂いた。
「………」
神田はスっと刀を下ろし、空いた片手で目隠しを取ろうと手を持ち上げた。
「!!」
キ キキンッ
「……チッ!!」
あと一瞬反応が遅れたらどうなっていたか。
神田は盛大な舌打ちと共に目隠しを剥ぎ取った。
足元に散らばるのは、不思議な造形をしたいくつもの鋭利な小型刃物。
「オイコラライ!!突然投げんじゃねェっていつも言ってんだろうがッ!!」
剥ぎ取った目隠しを地面へ投げ捨てながら怒鳴れば、頭上からケラケラと笑う声。
大きな溜息を吐いた神田の目の前に、少女がストンと着地した。
同時に地面に転がっていた刃物達が光に包まれたかと思うと、だんだんと彼女の手首に集まり見慣れたブレスレットを形作っていく。
『結構本気で投げたんだけどなぁ、惜しかったか』
「惜しいも何もあるか!当たったらどうすんだ!」
『だから、当てるつもりで投げたんだってばー』
「ッテメェ…!」
ジャキ、と六幻を構えた神田に、ライも刀へと変えた水牙を構える。
『さぁ!本日も楽しい鍛錬、いってみよーっ!』
先に動いたのはライだった。
真っ直ぐに神田へ向かって地を蹴ると、斜めから刃を打ち込んだ。
「っ…臨むところだ…!」
それを六幻で受け止めた神田は、間近に迫るニヤニヤ顔のライに口端を上げて応えた。