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それからすぐ、出港の準備の為にリナリー以外のエクソシストと、アニタやマホジャ、その他船頭員が一隻の大きな船に集まって作業をしていた。
アレンはその眼を活かして念の為マストの上に一人立っている。


「ティムキャンピー、この海の先に師匠がいるのか?」


アレンの横を飛ぶティムは、相変わらず真っ直ぐと地平線の向こうを見つめたまま。


「できればあの国には行きたくなかったのになぁ、バカ師匠……これで死んでたりしたら恨みますよ」


小さくため息をついて、マストの上に座った時だった。


キュイン


「!」


アレンの左眼が反応した。


「(アクマ!?まだ遠い、どこから…!?)」


青空に目を凝らすアレンの左眼が、その姿を捉えた。
目を見開くアレンの目に映ったのは、まるで餌に群がるアリの大群のような、無数のアクマの大群。


「みんな!!」


突然のアレンの声に、下で作業していたライ達は揃って上を見上げた。


「アクマが来ます!!」


その言葉に反応し、空を見回したライの目にも、その大群が映った。


『……な、んだ、あれ…』
「なんて数なの!!」
「オレらの足止めか!?」
「迎撃用意!総員、武器を持て!!」


一気に慌ただしくなる船内に、エクソシスト達も揃って各々イノセンスを発動した。
アクマ達が船に突っ込んでくる。
アレンを初め、エクソシスト達がそれぞれのイノセンスで攻撃を開始する……が、


「!?何だ…?」
『っ、何かおかしいぞ、これ』
「何やってんだこいつら………船を通り越してくさ…!?」


ライ達の攻撃に反応することなく、アクマの大群は船を通り越して先を急いでいるようだ。


「どうして……うあっ」
『アレン!』


突然、一体のアクマによって連れ去られたアレン。


「っ伸…」


すぐに追おうとするラビだったが、それは一つの声によって遮られた。


「あーーーーー」
「!!」
「エクソシストがいるぞ!」


一体のアクマによって、ライ達の存在が次々と他のアクマ達に伝わっていく。
それはアニタ達人間も同じ。


「くっそ…!」
『ラビ、オレがいく!』
「ライ!?」


と、狼となった水牙に乗ったライがティムと共にラビの横を通り過ぎ、積み上げた荷物の上へ降り立った。
驚くラビへひらりと手を振る。


『そっちは任せた!』
「ライ!…くそっ、無事でいろよ…!」


ラビの返事を待たないうちに水牙が地を蹴り、通り過ぎていくアクマ達を踏み台にして船を離れていった。
アクマ達の攻撃を軽々と避けながら、水牙は前へと進んでいく。


『ティム、街にリナリーがいるはずだ。伝達頼めるか?』


ライの言葉にティムは宙で一回転するとすぐに街の方へと飛んでいった。
金の筋を見送ったライはぐっと前方を見据える。


『どこだ…』


と、すぐに遠く前方で爆撃が起こっているのが見えた。


『水牙!』


水牙のスピードが上がる。
爆撃がどんどん近くなっていく。
そして突然、それが止んだ。


『…?』


怪訝そうに眉を寄せるライの目に、アレンがアクマから離れ落下するのが見えた。
が、すぐにその下にいた別のアクマによって捉えられてしまう。


『水牙、跳んで!』


足元のアクマを強く踏み、力強く跳んだ水牙。
ライは水牙を刀に変えると、そのスピードのままアレンを拘束するアクマを叩き切った。


「!」
『アレン!』
「ライ!」


ド ン !


『「!?」』


落下しながらもしっかりと手を繋いだ二人の後方で、突然何かが大きな爆発音を上げた。


「出たぞぉ!!」
「ギャハハハハハ」


騒ぎ出すアクマ達。
同時にその爆発元から現れた、巨大なナニカ。
頭と両腕を失った人の上半身を模したそれは、上に天使の輪のようなものを浮かべ、喉元に十字架、そして心臓部には何かが埋め込まれているようだ。
ライの目が開く。


『…あ、……』
「いっけぇ!!!」
「ブッ殺せやぁ!」


アクマ達は一斉にライとアレン……ではなく、その向こうにいるあの巨大なナニカへと突っ込んでいく。


「!!」
『ぅ、…っ!』
「あっ…!」


二人はその大群に飲まれ、繋いだ手が解かれた。


『っ…』
「ライ…ッ!!」


イノセンス第2開放ーーー"繋累(ケイルイ)"ーーー
音響の踏技 音枷(オトカセ)
音により発生する空気の波動ーーー
音枷はその波動を地盤にして 音速をもたらす!!


パシッ


突然ライとアレンは力強く手を引かれ、アクマの大群から抜け出した。
そのまますぐ、地に足を付ける。
ライが小さく足をもつれさせたが、気づかれることは無かった。


「は、速いねリナリー」
「ごめん、大丈夫だった?」
「うん!」


二人を大群から引き離してくれたのは、リナリーだった。
急いだのか大群によってなのか、髪が解かれている。


「それより…」


ウオオオオオオ


「!?」
『だ、だめ…見ちゃ…』


静かに零れるようなライの制止が聞こえなかったのか、アレンとリナリーは後方上空を振り返った。
声にもならないような雄叫びをあげるナニカへ、アクマ達は一斉に攻撃をしかけている。


「…………!!」
「攻撃されてる…!?まさか、アクマ達はあの白いモノを狙って来たのか…!?」
『っ、ダメだ…!』
「ライ?ダメって……」


再度言ったライの言葉がやっと聞こえたのか、リナリーが一度ライを振り返ってまたナニカへと視線を向け、そして目を見開いた。


『リナリー…!』
「あれは…っ」


ナニカの心臓部に埋め込まれたもの。
アクマの砲撃が当たって起こった煙が晴れたそこには、胸より下が埋まった人の姿。
暗い瞳から、力なく開いた口から、赤黒い血がこぼれ落ちる。
その人物には、見覚えがあった。


「スーマン…?」


マタ 咎落チダ


「あ…っ」


響き渡るリナリーの悲鳴。


「リナリー!?どうしたんですリナリー!?」


地面に膝を着き顔を覆うリナリーを支えながら焦るアレンがライを見るが、彼女もまた汗を浮かべた青い顔を歪め、地面に突き立てた水牙をぎゅっと強く握りしめている。


「ライ…!一体何が…」
「咎落ち…」
「!?」
「し、使徒の…なり…そこない」


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