モノクロ | ナノ


『たっだいまー』
「帰ったさ〜」


いつもの通り地下水路から教団内へ入った二人は、そのまま科学班フロアへと足を進めた。
重いドアを開ければ、そこでは沢山の科学班の人達が忙しなく動き回っている。
と、つんつんとした薄茶色の髪の男性がライ達に気づき片手を上げた。


「ライ、ラビ!帰ったのか、おかえり」
「おう、ただいま」
『リーバーさんただいま!』


リーバーの声にちらほらとライ達に気づく人が増え、おかえりの声も増えていく。


「ライのとこもラビのとこも、特になんともなかったんだってな。お疲れさん」
『まあ、なんともなかったっちゃあなかった』
「…ん?何かあったのか?」
「ハハ…」


ハテナを浮かべるリーバーに、苦笑いを返すラビ。
げんなりとした表情を見せていたライだが、すぐに顔を上げるとキョロキョロと周りを見回した。


『あれ?リナリーは?ついでにコムイさんも』
「ついでって………リナリーには室長を連れ戻しにいってもらってる。まあ、いつものことだ…」
『…なんか一気にやつれたなリーバーさん』
「お、噂をすればってやつさ」


流石というべきか、何かに気づいたラビがドアの方を振り返りライ達もそちらを見れば、丁度ドアが開いたところだった。
入ってきたのは真っ白な団服に身を包み眼鏡をかけた長身の男と、その後ろからエクソシストの黒い団服に身を包んだ黒髪ツインテールの女の子。
男は沈んだ表情をしていたが、ライをみるとすぐに顔を明るくさせた。


「ライちゃん!帰ってたんだね!!」
「オレもいるんですけど」
『コムイさん……相変わらず皆に迷惑かけてんのか……』
「ライちゃんまで酷いよう…!!!」


今度は泣き出すコムイを無視して、ライはその後ろへとひょっこり顔を出す。
そして見えた人物へと勢いよく抱きついた。


『リナリー!!』
「ライ、帰ってたのね!おかえりなさい。ラビもおかえり」
「ただいまさー」
『あー…やっぱりリナリーの天使スマイルは究極の癒し…』
「もう、ライったら何言ってるのよ。ライこそ、私の癒しよ?」


ふふっと笑うリナリーにまたしても騒ぐライ。


『そんな天使なリナリーにケーキ買ってきたんだ、もしよかったら談話室で食べよ!』
「あら、丁度よかったわ。ライが帰ってくるって聞いたからお茶の用意をしてたの」
『これはもう運命だねリナリー!!!』


ライはリナリーの手を取って目を輝かせ、リナリーは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
きゃっきゃとお花畑の雰囲気を出すライとリナリーに置いていかれた男達は、


「やっぱり女の子っていいもんさ…」
「ねえリーバー君、ボク、ここに足りないものが分かった気がするよ…」
「とりあえずアンタは溜まった仕事を早く片付けてください」


眩しそうに二人を眺めていた。


『そいえばリナリー、ユウがどこにいるか知ってるか?』
「神田?さぁ、どこかしら……任務は入ってないはずだから、自室か鍛錬場じゃない?」


首を傾げたライに、リナリーも同じように首を傾げる。


『ケーキ、四人で一緒に食べたくて買ってきたんだー。まあ買ったのはラビだけどね』
「あらそうだったの、ラビありがとう」
「いーえ、ライと約束したかんな」
『てことでユウを探しに行くぞー、おー』


ライは、おー、と片手を突き上げるが、ふと浮かんだ疑問にぱちくりと瞬きを繰り返してリナリーとラビを見た。


『……今更だけど、あいつ一緒に食べてくれっかな』


ライの疑問に二人は顔を見合わせると、くすりと笑う。


「大丈夫よ。(不本意だけど)ライがいるもの」
「だな。(気に食わねぇけど)ライがいるから大丈夫さ」
『どっから来るんだその自信…!何、オレ生贄にでもなんの!?』


コムイやリーバー達に手を振り、未だにくすくす笑うリナリーとラビに引っ張られるようにしてライは科学班フロアを後にした。
とりあえず、と三人が向かうのはお目当ての人物の自室。
特に何も無ければたぶん彼はそこにいるだろう。
長い廊下に続くいくつものドアの前を通り過ぎ、やっと彼の自室の前へ辿り着いた。


コンコンッ


ライがドアをノックしてから数秒、カチャリとドアが開いた。
そこから覗くのは口を真横に結んだ仏頂面で、長い黒髪を高い位置でポニーテールにした、一見美少女にも見える人物。


「帰ったのか」
『ん、ただいま、ユウ』


神田はドアの前に立つライを見るといくらか表情を緩めるが、後ろにいるラビを見つけるとすぐに眉を寄せた。


「…何の用だ」
「ちょ、オレに当たり強くない?」
「ハッ、日頃の行いだろ」
「オレが何したんさぁ…!」
『はいそこ、イチャイチャしてないで』
「「してねぇ(よ/さ)!!!」」


ふふっと笑うリナリーに抱きつきながら、ライは神田を見上げた。


『任務帰りにケーキ買ってきたんだよ。一緒に食べよー?』
「ケーキだぁ?」
『ユウのやつは甘くないのにしたんだけど……やっぱりだめ、か…?』


しゅんとするライに言葉を詰まらせた神田は、少しして小さく息を吐いた。


「……しょうがねぇな…」
『いいのか!?』
「今日だけだ」
『リナリー!ラビ!見たか!ユウがデレたぞ!!』
「やっぱり行かねぇ」
『そんなこと言わずに!行こーよ!』
「あ゙ー!!わかったから引っ張るんじゃねぇ!!」


ライはリナリーから離れると神田を無理矢理引っ張っていく。
それを引き剥がそうとする神田と剥がされまいとしながらも引っ張るライの後を、リナリーとラビが微笑ましく笑いながら続いた。
その後談話室は、夜遅くまでわいわいとした明るい空気に包まれることとなる。



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