モノクロ | ナノ


なんだ?
何を恐れてるんだ、僕は?
人間の中にいるのが怖い?
全て人間に見える
今、左眼は使えないんだ
……人間か?


妙な緊張感に、バッと後ろを振り返る。
しかしそれは気のせいだったようで、振り返った先はわいわいと賑やかな風景が広がっていた。
ほ、とアレンの胸が撫で下ろされた。


「エクソシストでちゅね」


突然アレンの後ろから頭に突きつけられた銃口。
ドン、と大きな音が響いた。


「あっぶな〜…なーにやってんだよアレン」


尻もちをついたアレンが呆然と見上げた先にいたのは、逆さまになった巨大な槌の頭部に乗ったラビ。
柄の直線上に頭部から飛び出している尖った十字架の先でアクマを突き刺していた。


『立てるか?敵襲だ』


ラビの横にすたりと降り立ったライが、アレンへと手を伸ばした。


「きゃああ!!」
「人殺し…!」
「人殺しだ!!」


傍から見たらそうだろう。
しかしライとラビはその声を気にすることなく平然と立っていた。


『アレン、大通りは人が多くて危ないよ。さっきみたいに、アクマに背後をとられる』
「人間を見たらアクマと思わねーと。お前今、アクマを見分ける眼、使えねェんだろ?」
「ご、ごめん、ありがとう…」


アレンはライの手を取ると、まだ呆然とした表情を残しながらもゆっくりと立ち上がった。
ラビが槌を元の大きさへと戻していく。


「二人は今…どうして…」
「ん?」


ドンッ


「「!!」」
『っ、新手か!』


突然、巨大な塊が三人を襲う。
幸い当たらなかったものの、すぐ側に落ちた反動で三人は少しだけ投げ出された。
尻もちを着いたまま塊が放たれた方を見上げれば、建物の上にレベル2と見られるアクマが一体。
……と、


「あちちっ」
『熱っ』
「これ熱い!」


先程放たれ地面にめり込んだ巨大な塊が、凄まじい熱気を放った。
慌てて離れる三人へ、アクマは再度、まるで野球でもするかのように新しい塊を打ち込んだ。


「大槌小槌」


ラビが器用に片手で槌をくるくると回す。


「満満」


ラビの言葉に反応するかのように槌がどんどん大きくなっていく。


「満」
「(でかくなった…!)」


ライとアレンの上で三人合わせても足りないほど大きくなった槌を、アレンは驚きの表情で見上げた。


「頭下げろよぉー。…こんな大通りでんなモン投げっとぉ」


そしてラビはそんな巨大な槌を軽々と振りかぶると、


「危ねェだろアクマ!!」


放たれた塊へと叩きつけた。
塊は粉々に崩れたが、槌は勢いを落とすことなくそのまま近くの建物へと物凄い音を立ててめり込んだ。


「あ」
『ちょ!?』
「(建物まで壊したー!!)」
「あは、ダイジョブダイジョブ、コムイが弁償してくれっさ!」
『毎回毎回、よくそんなぶっ壊すなぁ…』


悪気なさげに笑いながら槌を元に戻すラビに、ライは深々とため息をついた。
それからすぐにちらりと周りへと視線を移す。
流石にこんな大通りでこれ以上戦うのは危険だ。


『とにかく、場所を変え…』
「動くな!!」


ライの言葉を遮ったのは、一人の警官だった。
近くにいた女性がこちらを指差し、警官へと情報を伝えていく。


「キサマら!動くなよ!」


足早に歩み寄ってきた警官は、近くにいたアレンの腕を掴み引き寄せた。


「連行する、来い!」
「あ、いや、僕達は…!」


慌てるアレンの横を通り越し、警官の顔へスッと刀の切っ先が突き付けられた。


「や、やめなさい、何を…!」
「ライ!?」


声を震わせる警官と驚いて振り向くアレンの目に、鋭い目で警官を睨むライの姿が映る。
ライは発動した水牙を握り、じっと警官を睨んでいた。


「やめ…なさい!」
「!!」


と、これ以上は騙せないとでも思ったのか、語尾を強めながら警官はアクマの姿を現した。
隙を与えず容赦なく撃ち込まれる弾丸を後ろに飛びながら、アレンは左手で、ラビは槌を回転させながら弾いていく。
ライは軽く避けながら一気に間合いを詰め、まだ半分警官の姿をしたアクマを真横に切り伏せた。


「また新手!コイツら、オレらとドンパチしに来たみてェだな!…ライ!」
『ああ、行こう!』
「…………」


楽しそうに笑うラビに、ライは横目でアクマが消滅するのを確認しながら返事をすると、未だ驚愕するアレンと共に壁を超えて人通りの少ない方へと向かった。


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