モノクロ | ナノ


ロードの放った蝋燭がミランダを串刺しにしようとしたその時。


「!!アレン…」


動けないミランダを、アレンが巨大化させた左腕で庇った。
アレンは何も言うことなくミランダの手に刺さる杭を引き抜くと、解放されたミランダは弱々しい悲鳴をあげて壁際へと逃げた。


「!アレンくん…!?」


ミランダがアレンの方をみると、アレンは時計の側に座り込んだまま動かない。


「アレンくん…?しな…死なないで…アレンくん死なないで…」
「だ、大丈夫…」


重症を負いながらも安心させるようにミランダへと微笑むアレンに、投げ出されていたミランダの手がきつく拳を握った。
アクマ達の顔が驚きに変わる。


「何だ、メス?」
「何やってんだ〜〜?」
『…………』


先程まで弱腰で逃げていたミランダが、アレンを庇うようにその体を抱きしめていた。


「は…はは…ホント何やってんの私………でも…でも…」
「人間に何ができんだよ〜〜〜〜」
「でも…」


カ ッ


突然、ミランダの弱くも力強い声に応えるように柱時計が光り、ミランダとアレンを含む一帯がドーム状の輝く空間に包まれた。
ロードが目を見開き、ライは変わらず黙ったままそれを眺め、アレンはぼうっと光を見つめる。


「(あら?何かしら…?何かの存在を感じる)」


ミランダの目に映るのは、いつも一緒にいた柱時計。


「イノセンス…?」


時計はその呼び掛けに反応したかのようにぐにゃりと形を変え、ミランダの頭上へ大きな時計の文字盤が浮かび上がった。
カチ、コチ、と音を立てて文字盤の針は逆さに回り出し、ドーム内からはいくつもの時計の模様が浮かび上がっては文字盤へと吸収されていく。


「ミランダさん、………!」


と、床同様、アレンの体からも時計の模様が浮かび始めた。
驚くアレンを他所に、腹、腕、そして左目からも次々と模様が浮かび、巨大な文字盤へと吸い込まれていく。
時計の模様はいつの間にかカメラフィルムのように、アレンが傷を負った場面を映し出していた。


カチ   コチ


「!」


針の音と共に、服を含めたアレンの体は何事も無かったかのように元通りになった。
ミランダは驚きアレンを見つめている。


「ア、アレンくん動けるの…?」
「ミランダさん……」


おろおろとしているミランダへ、アレンが微笑んだ。


「そっか…やっぱり適合者だったんですね」


アレンが綺麗になった左手をぐっと握った。


「何だぁこれ?」
「ロード様ぁ、これ触ってみていいですかねー?」


ミランダのイノセンスによって作られたドームの外では、中の様子を伺おうとアクマ達がうろうろしていた。
一体のアクマがそーっと指先をドームへ近づけたその時、


ドン


アクマの腕を切り飛ばしながら、巨大化したアレンの腕が真っ直ぐにロードへと伸びた。


「!?ろーとタマ!!」
「!」


アレンの腕はひらりと避けるロードを気にせず、リナリーが座る椅子を掴んでドーム内へと戻っていく。


「ろーとタマ!」


足場を失くしたロードの足元へレロが入り込み、ロードはレロの上へと着地する。
ロードはじっとドームの方を見つめていた。


「あいつの手…ケガが治ってた」


一方で、ドーム内へリナリーを引き込むことに成功したアレンは心配そうな顔でリナリーの安否を確認していた。
リナリーの細い手首からは、心地よい鼓動のリズムが伝わってくる。


「生きてる……!」
「アレンくん、リナリーちゃんは…?」
「…大丈夫。この中にいれば…」


すぐにリナリーの体からも時計の模様が浮かび上がって言った。
虚ろだった目に光が戻る。


「あれ…私…?」
「リナリー!…ぐふっ!」


喜びも束の間、開かれたリナリーの手からアレンの顔面に何かが一直線にめり込んだ。


「ティムキャンピー!何でそんなトコから…っ」
「あ、アレンくんが倒れた時一緒に砕けちゃって、ずっとカケラを持ってたの…って私どうしたの?ここ、どこ?」


顔面からティムを剥がしたアレンとミランダへ、あれ、元気?このカッコ何…?と疑問を口にするリナリー。


「僕達、ミランダさんのイノセンスに助けられたんですよ」
「え?わ、私…?私が…??」


アレンが大きな時計の文字盤を見上げた。


「あなたが発動したこのイノセンスが、攻撃を受けた僕らの時間を吸い出してくれたんです。ありがとう、ミランダさん!」


微笑んで礼を言うアレンに、ミランダの目からは涙が溢れ出した。
しかし、


「アレンくん、ライはどこ?」


ふとしたリナリーの質問に、アレンとミランダに一気に緊張が走った。


「ライに、何かあったの…?」


二人の雰囲気を察してか、リナリーの声が震える。


「リナリーちゃん…」
「…僕にも詳しいことは分かりません…ライは、この空間の外にいます」
「どういう、こと…?」


アレンは真面目な顔でリナリーを見つめた。
リナリーは今にも泣きそうな、心配そうな顔でアレンへ問いかけた。


「…敵の能力だと思います。恐らく、ライは今何かに操られてる。さっき敵を庇うように僕に攻撃をしてきたんです」
「え…!?」
「ライちゃんの目、何も映していなかったわ……まるで心が空っぽになったみたい…」
「何も、映してない…?…心、が、空っぽ…」


ミランダが恐る恐る呟いた言葉にリナリーは僅かに反応したが、アレンもミランダも気づくことは無かった。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -