モノクロ | ナノ


「エクソ…シスト…?」
「はい……てか、なんで逃げるんですか、しかも窓から…」
「ごめんなさい、何か条件反射で…」


開けられたレストランの窓から、物凄い顔で荒く呼吸を繰り返す女性のスカートを掴むアレン。
図だけ見れば、一見疑われそうな構図だ。


『アレン、女性のスカートは掴むものじゃないぞ』
「今回は…見逃してください…」


アレンも少しばかり息が上がっているようだ。


『お二人共、とりあえず座り直しませんか?』


ライの言葉で、改めて4人でテーブルを囲んだ。


「わ、私はミランダ・ロットー。うれしいわ、この街の異常に気づいた人に会えて…」


ミランダの自己紹介の後ろで、ロゼワイン10樽を注文する店主の声が聞こえる。


『(リーバーさんが言ってたあの話か…)』
「あ、でもウンコはよけられるようになったんだけどね」
「ウンコ?「(この人だいぶキテるっぽい…)」」
『(…は?)』


途中入ってきた思いもよらない単語にライの思考は中断され、ライはそのままミランダへと思考を集中させた。


「ミス・ミランダ、あなたには街が異常になりはじめてからの記憶があるの?」


リナリーの質問にミランダは小さく頷く。


「ええ、街のみんなは昨日の10月9日は忘れてしまうみたいだけど。私だけなの…」


ここまで話して感極まったのか、突然泣き叫びながらアレンに迫り両手を握るミランダにライはびくっと肩を揺らした。


「ねぇ助けて、助けてよぉ!私、このままじゃノイローゼになっちゃうぅ〜!あなた昨日私を変なのから助けてくれたでしょ!助けたならもっと助けてよーっ!!」
「うわわっ怖いっ!ライ助けて!」
『ちょ、落ち着けミランダさん!助けるから原因を探そう、な!?』


アレンに助けを求められ、ライはミランダの肩を優しく掴むがミランダは泣き続けるばかり。


「原因ったって気づいたらずっと10月9日になってたんだものぉ〜!!」
「本当の10月9日に何かあったハズよ。心当たりは無い?」
『…!』


リナリーが優しくミランダを諭す中、ライはゾクリとしたものを背中に感じた。
それはアレンも同じようで、ライと同時にガタリと椅子から立ち上がる。


『…リナリー、すぐにミランダさん連れてここを出て』
「キミのダークブーツならアクマを撒いて彼女の家まで行けますよね?」
『オレ達がミランダさんに目をつけたのと同じように、アイツらも彼女に目をつけたみたいだ』


静かに言うライとアレンに合わせるように、店にいる客が次々と席から立ち上がっていく。


「なぜミランダさんが他の人達と違い奇怪の影響を受けないのか。それはきっと、ミランダさんが原因のイノセンスに接触してる人物だからだ!」


左手の発動を解いていくアレンの左目が、数体のアクマを捉えた。


「…え?」


アレンの横でライも水牙を発動させると、それはブレスレットから刀へと形を変えていく。


『すぐ戻る』
「気をつけて、ライ」


驚愕の表情を浮かべたミランダを、ダークブーツを発動させたリナリーが一瞬にして抱え去った。


『レベル2が結構いるな……気をつけろよ、アレン』
「はい!」


その言葉を合図に二人が動き出す。
刀型になったアレンのイノセンスが一体のアクマに突き刺さり、そのまま両断した。
少し離れた場所でライがボール型のアクマを次々と破壊していく。


ーーーパングヴォイス!


「!?」
『っ、』


ライがアレンの元へ降り立った時、突然頭の内側に甲高い音が鳴り響いた。
どうやらカボチャのようなアクマが元凶のようだ。


「ぐあっ…頭が…割れるっ…!!」
『っ、く…ぅ…』


ーーー風切鎌!!


「つ…っ」
『っ…』


そこへ放たれる、別のアクマからの攻撃。
ライとアレンは痛む頭を抑えながら避けるのに精一杯だ。
ふと、頭の中の音が止み、同時に二人の真上からまた別のアクマが攻撃を仕掛けてくる。


『っこっちだ!』
「うわ!」


ライがアレンを引っ張って横に飛ぶと同時に、今まで二人がいた場所は物凄い音を立てて粉砕された。


「!」
『アレン!?』


スザザッとブレーキをかけるアレンが小さく呻いた。
見るとアレンの右のすね辺りで青白い火が揺らめいている。


『大丈夫か!?』
「ええ…!」
「炎より熱いアイスファイヤ…」


アクマが発した声に先程の場所を見れば、地面では沢山の氷が青白い炎をあげていた。


「少しでも触れる、肉を焼き腐らせる、あっという間」
「斬り裂こう、斬り裂こう」
「ダメダメ、ボクのヴォイスで脳ミソを壊した方が面白いよ」


三体のアクマがどう動くのか、ライとアレンはじっとアクマ達を見据える。
…が、


「斬り裂くんだよ」
「イヤ、腐らせる」
「脳ミソだってば!!」
「「「………」」」


アクマ達はあろうことか、敵であるライ達を放ってその場でジャンケンを始めた。
ライとアレンは静かにそれぞれのイノセンスを銃型へと変える。


『「………………」』
「「「ギャーーー!!!」」」


そして容赦なく撃ち込んでいった。


「何すんだテメェっ!!ジャンケンのスキに攻撃するなんてヒキョーだぞ!!」
『アホか…』
「そんなもん待つワケないでしょ」
「「「エクソシストブッ殺す!!」」」


怒りが頂点へと達したアクマ達は、敵意むき出しでライ達へと迫ってこようとしていた。


キ ン


突然ピタリと動きを止めるアクマ達。


「!?」
『なんだ…?』


そして三体のアクマはそのままライ達へ攻撃をすることなく、一瞬にしてその場から立ち去っていった。


「…………何なんだ…?」
『…とりあえず、この辺を少し見回ってからリナリーのとこに戻ろう』
「はい、行きましょう」



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