モノクロ | ナノ


「!ちくしょお、次はリナリーとライかよ!!」
『リーバーさん!』
「エクソシスト、リナリー・リー、ライ・トキハ、手術シマス」
「ライ!リナリー連れて早く逃げろ!」


ライはリナリーをしっかり支えると、ぐっと足に力を入れる。


『リナリーが起きるまでは…オレがなんとかしねぇと…!』


いざ地面を蹴って走り出そうとしたとき、頭と背中にズキっと鈍い痛みが走った。
勢いのままがくっと地面に膝をつく。


「ライ…っ!?」
「ライちゃん!?」
『っ、(くそ…そういや怪我だらけだったんだ…)』


リナリーを落とさないように頭を押さえながら振り返ると、コムリンがもうすぐそこに迫っている。


「マッチョは嫌ーーー!!ライちゃああああん!!!」


頭に響くコムイの声に顔をしかめながら、リナリーが起きてくれることを祈って目を閉じた。
そのすぐ後、体がすごい勢いで引っ張られたかと思うと、続いて建物が破壊される音が少し遠くに聞こえてきた。
それと同時にコムイの叫び声が聞こえる。


『…うえぇ…』


衝撃と若干の浮遊感に顔を歪ませながらうっすらと目を開けると、目の前に流れるのは綺麗な黒髪。


「ライ…?」

『リ、リナリ、よかった、目ぇ覚めたんだな…』


先ほどの弾丸切れになった大砲の先に、リナリーに支えられるようにして立っていた。
目の焦点が定まっていないリナリーに聞こえているかわからないが、ありがとう、と礼を言ってからその後ろに立つ。


「リナリー!!ライちゃん!!」



二人の生存に喜ぶコムイたち。
だがやはり皆の声が聞こえていないのか、リナリーは返事をせずにバランスの悪い大砲の上をふらふらと歩く。


「ライと…アレンくんの声が聞こえた……アレンくんは…?」


言い終わると、前方にいるコムリンを見てイノセンスであるダークブーツを発動させた。


「エクソシストは手術ー!!」


すごい勢いで突っ込んでくるコムリンを二人同時に飛んで回避した。
行き場をなくしたその腕が大砲へ絡み付き、化学班のリフトは少しずつ傾いていく。
綺麗に着地したリナリーの近くにライも着地して、間近に迫ったコムリンを見上げた。


「リナリー!!この中にアレンがいるんだ!」


まだアレンのコートにぶら下がっているリーバーが大声でリナリーに知らせた。


「お、落ちるーっ!!」
「出力上げろ出力!!」
「もう出てらぁ!!」



ついに、リフトがコムリンの重さに耐えきれずに落下し始めた。
投げ出される科学班をできる限り助けながら、何かあったとき用にとライも水牙を刀へと変える。


「リナリー、ライ、捕獲」


標的を決めるコムリンに向かってリナリーがリフトの手すりを蹴った。


「リナリー!」


勢いをつけたまま、イノセンスを発動させた足でコムリンの顔部分を破壊する。
心配そうにリナリーを呼んだコムイの顔が、驚愕へと変わった。

『うおー、かっこいー』


へらりと言ったライは武器を刀から銃へと変えた。
片手でその銃口をコムリンへと向けると、容赦なく打ち抜いていく。


「ライちゃーーーーん!?」
「銃…!」


顔を真っ青にしたコムイを他所に、リーバーや他の化学班がアレンの時のように目を輝かせた。
所々穴のあいたコムリンがレーザーのようなものでリナリーを捕えようと追いかける。
が、リナリーはそれをひらりと飛んで交わしていった。


「へっへ、ばぁか。イノセンスを発動したリナリーを捕えられるもんかよ…」


未だアレンのコートに捕まってぶら下がっているリーバーがにやりと笑いながらコムリンを見上げた。
リナリーが高く舞い上がる。


「胡蝶のように天空を舞い、鋼鉄の破壊力で地に落ちる。それがリナリーの対アクマ武器「黒い靴(ダークブーツ)」だ」


タイミングよく落ちてきたリナリーが、勢いのままアレンの収容された場所を境にコムリンの腕と胴体を切り離した。
リーバーがアレンを気遣う声が聞こえるが、ライにアレンの姿は見えなかった。


「やった…!」


体制を立て直した乗り物の上で、科学班たちが歓声を上げる。


「いいぞリナリー!ブッ壊せー!」
「カッコいいー!」


科学班たちの声を背後にスっと足を上げるリナリー。
と、


「待つんだリナリー!」


彼女の前にコムリンを守るように両手を広げて立ちはだかったのはコムイだった。
コムイの下からはアレンを背負ったリーバーがコムリンをよじ登って大砲へ移る。


『ん。…大丈夫かーアレン』
「ああ…さんきゅ、ライ」
「な…なんとか……」


リーバーに手を貸しつつ、ライは表情が死んでるアレンに心の中で合掌した。


「罪を憎んで人を憎まず、コーヒーを憎んでコムリンを憎まずだリナリー」
『(こっちは………いいや)』
「兄さん…」


コムイのキラキラとしたオーラとは裏腹に真っ黒いオーラのリナリーにライは乾いた笑みを零した。


「ちょっと反省してきて」


容赦なくコムイとコムリンを蹴飛ばしたリナリー。
遥か下まで落ちて、爆発した。


「なんだかな、もう…」


誰のものかわからない呟きと共に、コムリン騒動は幕を閉じた。



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