モノクロ | ナノ


「……と、いうワケだ。悪いな…こんな理由で」
「「(アホくさ……っ!!)」」
『あの巻毛野郎…っ!』


なんとかコムリンを撒いた五人は、隠れてリーバーから事の経緯を聞いた。
どうやらコムイの作ったコムリンなるロボットがコムイのコーヒーを飲んでしまい、今に至るらしい。


「リナリーは大丈夫なんですか?(エクソシストなんだ…)」


アレンが背負ったリナリーを心配するように聞いた。


「コムリンの麻酔針くらって眠ってるだけだ」


ライはしゃがんで息を整えながらアレンにおぶられたリナリーを見上げる。


『くっそあの巻き毛……リナリーを危険に晒しやがって……殺す……』
「ライ落ち着いて…!!」


と、アレンの向こうから聞こえたため息に視線をずらすと、頭を壁にもたげたリーバーがいた。


「ラクになりたいなんて思ったバチかなぁ…」
「え?」
「お前たちエクソシストや探索部隊は命懸けで戦場にいるってのにさ、悪いな。おかえり」
『…ただいま』


すぐに返事を返したライに軽く苦笑したリーバーは、返事が返ってこないアレンへ心配するように視線を移した。
ライはしゃがんだままアレンの足をつつく。


「アレン?」
『大丈夫か?』
「え…あっ、はい!」


はっとしてリーバーを見るアレンに、リーバーが眉を寄せた。


「何だよ、もしかして任務の傷が痛むのか?」
『無理して聖堂にいたからだろ』
「いえっ、平気です。た、ただいま」
「?」



はは、と乾いた笑いをこぼすアレンをライは見上げた。


『…ホントにだいじょぶ?アレン』
「…はい」
『あんま無理すんなよー』
「………はい」


それから暫く逃げ続け、やっと吹き抜けまで来ることができた。
ライは短く息を吐き出す。


「おおーい!無事かー!!」


その吹き抜けを下から上がってくるエレベーターのような逆三角の乗り物。
その上で、ボロボロになった科学班員がこちらに手を振っていた。


「班長ぉ早くこっちへ!」
「あ、アレンとライとトマも帰ってたの?こっち来い早く…」
「リナリィーまだスリムかいー!?」


乗り物の上でそれぞれ暴れる科学班+コムイに、リーバーが呆れた声を出した。


『早くあっちに…』


ライが言ったその時、後ろの壁がすごい音をたてて崩壊した。
そこから現れたコムリンはやはり傷一つついていない。


『くっ、そ…どんだけ堅ぇんだよ…!』


その衝撃になすすべもなく五人は吹っ飛ぶ。
どんどん建物を破壊していくコムリンを見てライはさぁっと顔を青ざめた。
と、科学班たちの乗る乗物から巨大な大砲がコムリンに向けられた。


「インテリをナメんなよぉ!!」
「壊れー!!」


スコープを覗いてレバーを握るジョニーと拳を突き上げる科学班。


「ボクのコムリンを撃つなあ!!!」
「!?」


突然、ジョニーに抱きついたコムイ。
そのせいでジョニーの握っていたレバーが軽い音を立てて手前に動いた。


『ぎゃああああ!?』
「どわわわわっ」


暴走した乗り物が内部からコムリン以上に建物を壊していく。


「何してんだお前ら!!」
『殺す気か!』
「は、反逆者がいて…」


弾丸切れとなって止まったその上でバタバタと暴れる科学班たち。
すぐに治まったその中から大砲の先へロープで縛られたコムイが出てきた。


「コムリン…アレンくんの対アクマ武器が損傷してるんだって。治してあげなさい」
「え゙?」
『ちょ…!』


涙を流して鼻水をすすりながらとんでもないことを言ったコムイに、アレンが顔を引きつらせる。


「損…傷…」


コムリンの視線がライの隣で固まっているアレンを捉えた。


「優先順位設定!アレン・ウォーカー重傷ニヨリ最優先ニ処置スベシ!!」
「!」


どこからか伸びてきたコムリンの手がアレンの足を掴んだ。


「わっ」
「アレン!」


ライが引っ張られたアレンから落ちたリナリーを受け止めて抱える。


「アレンを手術室へ連行ー!!」
「ぎゃあああ何あの入口!?」
『うわあ…(…すまんアレン…オレは普通にリナリー優先するわ……)』


ライはリナリーを抱えてリーバーの近くへ移動した。


「さあリーバー班長!コムリンがエサに喰いついてるスキにリナリーとライちゃんをこっちへ!!」
「あんたどこまで鬼畜なんだ!」
『…戦争に犠牲はつきものだよ、リーバーさん…』
「おまっ、えええ!?何言ってんだ!」


アレンが引きずられていく先では、たくさんの小さなコムイのロボットがアレンを待ち構えていた。
変なリズムに合わせてそれぞれ持っているものを動かしている。


「う…っ」


顔を青ざめたアレンがついにはイノセンスを発動して入口へと向けた。
今回のマテールで新しく手に入れた形だ。


「おおっ、新しい対アクマ武器!」
『!だ、誰かコムイを押さえろ!!』


目を輝かせるリーバーの隣で、リナリーを抱えたままライが叫んだ。
視界の端で何やらコムイが動くのを見つけたのだ。
が、虚しくも叫んだと同時にアレンの発動が解けてしまった。


「ふにゅら?」
『うわあああ!ごめんアレン!逝ってらっしゃい!』


力を失くして倒れるアレンにリーバーとトマが声を荒げてアレンの名前を呼んだ。


「室長ぉーっ!!!」
「吹き矢なんか持ってたぞ!」
「奪え!」
「だってだって、あんなの撃たれたらコムリンが…コムリンが…っ!!」
「大人になってください室長!!」


ドタバタと騒がしい科学班の声の中、弱々しい声が聞こえた。


「リ、リーパーしゃん…ライ……」
「『!』」
「リナリーをちゅれて逃げてくらしゃい…」
「アレン…!」


死んだように引きずられていくアレンが呂律の回らない声でリーバーとライに言う。
ライはリナリーを背中に背負って立ち上がった。
その横をリーバーが収容されそうなアレンの方へ走っていく。


「ぱやく…」


アレンが完全に収容される直前ギリギリに、リーバーがアレンの団服の裾をつかんだ。


「アレンんんんー!!!」


リーバーが閉じたドアから少しはみ出たアレンのコートを引っ張り、トマがドアを叩くが開く気配はない。
急に体を起こしたコムリンのせいで、コートを掴んでいたリーバーが宙に浮いた。



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