モノクロ | ナノ


「おおおおおっ!!」


ライが下に着くと、ちょうどアレンがアクマを巨大化した左手で切り裂いたところだった。


「!!(違う!これはアクマじゃない…ニセモノ!?)」
『アレン後ろだっ!!』


叫びながら走るライの声も虚しく。


「ここ、ここ!」


アレンの胸から血が飛んだ。
アレンに抱きつくようにして後ろからアレンと同じに見える巨大化した手をアレンの胸に突き刺しているのは、アレンによく似たもの。


「僕…っ?」
『アレンを…放せっ!』


ライは後ろからアレンの姿になったアクマに鑓を振り下ろすが、それはうまく避けられてしまった。
アレンの横に水牙を構えて並びながら、離れたアクマを睨む。


「ライ…!?神田と行ったはずじゃあ…!」
『一人より二人のがいいっしょ』
「へへへへへ、写したぞぉ、お前のチカラ…」
「!」


驚くアレンに笑顔を向けるが、聞こえたアクマの声にすぐに視線を送る。
下半身はさきほどのままだったが、上半身はアレンを左右対称にしたアクマが立っていた。


「お前私をナメてただろ」


言いながら手に着いたアレンの血を舐める。


『(うげ…キモチワルー…ていうかアレンの顔でんなことすんなし…)』
「私はレベル2!ボール型のアクマと違って能力に目覚めてんだぞ。つーか私も今知ったんだけど。これが進化した私の能力…」


アレンの顔をしたアクマが、その顔をゆがめて笑った。


「さあ、殺すぞん!!!」


アクマが右手を引く。


『(やばい!)』
「ライ!?」


咄嗟にライがアレンの前へ出て鑓を構えた瞬間、ライたちの体は吹っ飛ばされた。
そのまま何枚もの壁を突き破っていくと、しばらくしてやっとそれは止まった。
瓦礫に埋もれているために目を開くことができないままライは体を動かす。


『(いた、いような、痛くないような…?)』


突然、瓦礫の山が崩れたような音がし、若干の息苦しさもなくなった。
ゆっくりと目を開くと、目の前に傷ついたアレンの左手がある。


『傷が…!』
「…痛っ、何だったんだ今の…っ」


すぐ後ろから聞こえたアレンの声にライは、ばっと振り返った。
アレンはライの下敷きになるような形で瓦礫とライの間にいた。


『あ、アレン…!?』
「…なんであんな無茶したんですか。僕が左手で受けとめてなかったら、今頃怪我じゃすまなかったですよ」


心配そうに言うその言葉にライは目を見開いた。


『オレを庇ったのか…!?』
「先に僕を庇おうとしたのはライです」
『っ、それは……』


言い返す言葉がなくうつむくライに、アレンの、げっ、という悲痛な声が聞こえる。
顔を上げたライは、アレンが自分の左手についた傷を見て焦っているのを見た。


「うわーっ、キズ!キズついてる!!またコムイさんに修理されるよどうしよう!!!」
『…ごめん、アレン…』
「なんでライが謝るんですか!…でも、怖いなぁ…」


ずーんと落ち込むアレン。
ライがなんともいえない表情になったとき、どこかでビキビキと何かが軋むような音がし始めた。


『…あ?』
「?なんだろ、キシむような音が…」


アレンが言い終わるか終らないかのうちに、二人がいる場所の床が抜けた。


「お!?」
『おわっ…!』


そのまま二人はまっすぐに落ちて行く。


『…っ水牙!』


落ちながらもライが水牙を呼ぶと、蒼い狼が姿を現した。
狼になった水牙は二人を背中に乗せると、一度近くの壁を蹴って地面に着地した。


「た、助かった…」
『だいじょぶ?アレン』
「はい…ありがとうございます、ライ…」


アレンがほっと息を吐き出す。


『お礼なら水牙にな』


ぴょんと水牙から飛び降りながら言うライに、アレンは、え?と自分が乗っているものを見下ろした。
ふさふさとした、ほのかに蒼白く輝く毛並みが目に入る。


「お、狼…!」


おそるおそる水牙から下りるアレンに、ライはくすくす笑いながら水牙に手を伸ばす。


『危害は加えないよ。さっきも見ただろ?こいつはオレのイノセンスの水牙』
「も…もしかしてさっきの鑓の…?」
『そーそー。オレも最初はびびったけど』


嬉しそうにライの手にすり寄る水牙を、アレンは驚きを隠せないように見つめている。
ふと、ライが辺りを見回しながら口を開いた。


『…にしても、町の地下にこんな広い場所がねぇ…』


つられて辺りを見回していたアレンが、何かを見つけたようにその方向を見つめたままライに話しかけた。


「ライ、これは…」
『……地下通路、ってとこか』


アレンと同じ方を向いたライが見たのは、どこまでも続く長い通路。
途中途中右に折れたり、左に折れたり、上下左右の壁にさえ穴があいていて、巨大な迷路のようだった。


「行ってみましょう」
『あぁ』


それぞれ発動を解いた二人は、その巨大な迷路へと足を踏み入れた。



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