モノクロ | ナノ


「神田さん!血まみれじゃないですか!すぐ医療室へ行ってください!」
「ライさんも!所々切り傷ありますし、何かあってからでは遅いですから!」




03.新たな仲間




任務の後、教団へ着くとすぐに駆け寄ってきた医療班の人たちにライは苦笑した。


『いや、あの、たいした傷じゃないんで…』
「ほっとけ。たいして深い傷じゃない。俺よりこいつを見ろ」
『は!?ちょ、一人だけ逃げんな…!』


神田はライを医療班の団員へ押し付けると、ほかの団員たちを振り切って歩いていってしまった。
集中的に集まる医療班に、ほんとにだいじょぶですんで…と困ったような笑みを浮かべるライ。


「ライ!」


そうこうしていると、医療班の団員たちの向こう側から自分を呼ぶ声が聞こえた。
なんとなく開いた隙間から声の主を探す。


『リナリー!!』
「きゃ、」


その主が見えた瞬間ライは医療班を押しのけて走り出し、そこに立っていたリナリーへ飛びついた。
よろめきながらもしっかりと受け止めたリナリーはそのままライへ笑顔を向けた。


「おかえりなさい」
『ただいまっ』


同じく笑顔で返すライを、リナリーはぎゅっと抱きしめる。


『っ…!!(傷!腕の傷が痛いんですがあああ…っ!!)』


リナリーはライを離すとすぐに、その頬にある切り傷を見て顔を青くした。


「ライ…!顔に傷が…!」
『ん…マジすか』
「マジすかじゃないわよ!…もうっ、こっち来なさい!」
『ぬああー……』


リナリーはひっぱるようにライをどこかへ連れて行く。
残された医療班は呆然とその二人を見送るしかなかった。
暫くリナリーに引き摺られて着いたのは司令室だった。
入ってきた二人に気づいたコムイがぱああっと顔を明るくさせる。


「ライちゃん!おかえり!」
『あ、ただい「傷だらけじゃないかああああっ!!?」え、あの…』


が、リナリーに引っ張られてだんだん近づいてくるライを見て、コムイは驚愕の表情を浮かべた。


「誰がこんな酷いこ「兄さんどいて」…ぐすっ、ライちゃん…」


すごい勢いで寄ってきたコムイをリナリーは冷たくあしらうと、ライに大きいベンチのような所に座っているように言った。
ベンチの前には外の様子を映し出す装置があり、いくつものカメラからの情報を映し出している。
ライがベンチへ向かうとそこには先客がいて、モニターをじっと見ていた。


『あ、リーバーさん』
「お、ライ……あーあー随分と傷だらけで帰ってきたな…」


かけられた声に振り向いたリーバーは、ライの体の所々にある傷を見て苦笑した。
ライはむっと口を尖らせ、足を軽くぱたぱたと揺らした。


『ユウのが重症ですー。オレはこんくらいほっときゃ治る。みんな傷傷って大袈裟なんだよー…』


リーバーはむすっとしながら隣に座るライに、はは、と笑うとその頭をぽんぽん叩いた。


「わりぃな、心配症で。そんだけ皆、お前が大事なんだろ。ま、おかえり」
『う……ただいま…』
「ライ」
『…あ、リナリーどこいってたんだ?』


リナリーは返事の代わりに持っている箱を軽く持ち上げた。
ライの隣に座ると、自分の膝に箱を乗せてぱかっと開ける。


「ほらライ、こっち向いて」
『(なんだろう、最近治療されてばっかな気が…)っ、いてて…』


手際よく傷を治療していくリナリーに苦笑いをしながら、ライは何気なくふとモニターに視線を移す。


『…あれ?』
「はい、顔は終わったわよ。体の傷は…ライ?どうしたの?」


顔の傷を治療し終わったリナリーは、ライの視線がモニターにいったまま動かないのを見て首をかしげた。
つられてモニターに視線を移すと、誰かが教団の崖を上っている所が映し出されている。


「誰かしら…?」


リナリーの呟きに、周りに人が集まってくる。
上り終わったらしいその人は少し教団を見上げてから門の方へ歩き出した。
そこで彼が少年だということがやっと分かる。


『なんだー?敵襲かぁ?』
「は?こんな子供が一人でか?」


のほほんと言うライとツッコミを入れるリーバーを他所に、少年はどんどん門へと近付いていった。


「なんだいこの子は!?」


皆でモニターを見ていると、後ろから何事かと覗き込んだコムイが眉を寄せて立っていた。


「ダメだよ部外者入れちゃあ〜。なんで落とさなかったの!?」
「あ、コムイ室長。それが微妙に部外者っぽくねーんスよね」


コムイに気づいたリーバーが困ったような顔をして言った。


「ここ見て、兄さん。この子クロス元帥のゴーレム連れてるのよ」


リナリーがモニターに映し出された一部を指差す。
コムイの表情が驚きに変わり、ライもあっと声を漏らした。


『ティム!?』
"すいませーん。クロス・マリアン神父の紹介で来たアレン・ウォーカーです。教団の幹部の方に謁見したいのですが"


アレンの言葉、主にとある一部分に反応し、一瞬にして司令室でざわめきが起こった。
それはライも同じだ。


『あのセクハラ魔の紹介…だと…』
「元帥の知り合いだ!」
「やっぱりあの人生きてたのか…」
「「紹介」って言ってますけど、室長何か聞いてます?」


リーバーが外との通信機を耳につけながらコムイに聞いた。
コムイは黙ってコーヒーをすすっている。


「………………知らない」
『おい、ほんとかよ…ちゃんと確認したのか?』
「ええっ!?ボク何も聞いてないよう!」
『だってティムが一緒なんだぞ?』


じとりと睨むライの視線に、コムイはあわあわと困ったような声を上げた。


「後ろの門番の身体検査受けて」


ゴーレムから聞こえたであろうリーバーの声に従って、アレンは門番の方を向いた。
迫る門番に驚くアレンを見たライは申し訳なく思いつつも口端を上げ、自分が初めて門番に出会った時のことを思い出していた。
……と、


「こいつアウトォォオオ!!!」


教団内に響き渡る門番の声。


『へ!?ちょ、オレいってくる!』
「ちょっと、ライ…!?まだ手当が…!」


がたんと大きな音と共に立ち上がったライは、リナリーの声を無視してコーヒーを噴き出すコムイの横を駆け抜けた。


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -