モノクロ | ナノ


その後、アレンと共に検査を受けたライに渡されたのは、新しい団服だった。

ライの新しい団服は、旧団服同様ショートパンツ仕様だった。
上はピッタリとしていて且つ動きやすく相変わらずの七分丈で、後ろには膝裏辺りまでのフレア調のコートの裾のようなものがついている。
膝上まであるソックスは伸縮性抜群で厚手だが通気性もあり、その上部とショートパンツにつけられているベルトを留めれば固定も出来るようだ。
銀の装飾のついたブーツを履けば、まるで騎士の様。
そして新しくなったハーフフィンガーのグローブも、ブレスレット状の水牙の邪魔になることはなく、ライの手の関節にまでピッタリで刀等が握りやすく設計されている。


『か、かっこいい…』
「わぁ!ライ、騎士みたいでかっこいいですね!」


先に検査が終わり団服に着替えたライの後ろから、たった今検査が終わったアレンが出てくる。
先程とはうってかわりいつも通りのアレンにライは少し安心した。


『流石、科学班の作った団服だよねぇ。アレンのも、シンプルだけどメチャクチャかっこよさそうだったな』
「はい!着るのが楽しみですけど…とりあえずバクさんの所に行こうと思います」
『ん、オレも行く』


そして二人は連れ立って、バクがいる情報室へとやってきた。
二人が入ってきたことに気づいたバクが入口を振り返る。


「…"道化(クラウン)"……まるでそれみたいですね、僕の姿」


バクの前に展開された大きなモニターには、神ノ道化となったアレンの姿が大きく映し出されていた。


「ライ、ウォーカー、検査は済んだのか?」
「ウォンさんが"異常ナシです"って」
『オレも』


そこら中の空間に展開するいくつものモニターに感心しながら言うアレンとライに、バクは、そうか、と安堵の表情を浮かべた。


「ライ、新しい団服似合ってるぞ」
『ありがと』


照れたように笑うライに、バクもふと小さく笑う。


「左腕は?」


バクが続けた言葉にアレンがシャツを捲った。
そこには、以前よりも綺麗につながったアレンのイノセンスがあった。


「まだ少し感覚がボケてますが、大丈夫です」
「そうか。ライも、イノセンスの調子はどうだ?」


ライが手首に着いたブレスレットを優しく触った。


『うん、すごく調子いいよ。二人で一つになったみたい』
「そうか、よかった」


にこりと笑ったライにバクも笑顔を見せるが、その笑顔に違和感を感じたのか、ライが少し首をひねり、アレンもきょとんとバクを見つめた。
手に持ったアレンの身体を示したカルテのようなものへ視線を落とすバクに、二人がその顔を覗き込む。


「バクさーん?」
『……バク、なんかしょんぼりしてない?』
「あ、いや、なんでもない。"神ノ道化"か…そう呼ばせてもらうよ」
「強かったですか?」
「ん?」
「強かったですか?僕のイノセンス」
「あ…ああ!強い対アクマ武器だったぞ、ウォーカー」
「そっか!」
『……(バク、まだあの時のこと気にしてんのか…)』


話を遮るように鳴り響いた電話の音。


「支部長!本部との回線、復旧しました!」
「あ、うむ!」


サッとそちらへ意識を向けたバクは、一度チラリとアレンを見た。


「ではウォーカー、ライ、後でまた会おう」
「はい」
『(うわ…わざとらしい…)』
「バクさん」


いそいそと電話を受けに行ったバクに、アレンが声をかける。
バクが再度、アレンを振り返った。


「コムイさんが何と言っても、僕は方舟に乗りますよ」


そしてそのままアレンは部屋を出ていった。


「あ…ライは行かなくていいのか…」


その場に残るライに、受話器を持ったままのバクが声をかけた。
が、


『バク』
「?」


その言葉を遮るように、ライが口を開く。


『バクは優しすぎだな』
「………」
『そんなんだから、オレも何としてでも守らなきゃって思うんだから』
「なっ…」
『オレ達は、自分の居場所に戻るだけ。で、絶対ここに帰ってくる。だからバクは、いつもみたいに笑顔で見送ってよ』


ライがにっこりと笑った。


『オレとアレンを導いてくれてありがとう』


そう言ってライはバクの返事を待つことなく、くるりと踵を返した。



* * *



『んー、アレン、ここじゃなかったか…』


ライが着いた先は、先程までレベル3のアクマと激しい戦いが繰り広げられた場所。
アレンを探して来たものの、そこにアレンの姿はないように見える。


『(てことは、フォーのところかな…)』


オレも後で行こう、と小さく呟くと、まだ瓦礫の山が積み重なるそこを静かに降りていった。
忙しなく動き回る科学班達の邪魔にならないように足を進めれば、いくつかの見慣れた姿が視界に入る。


「これがあの伝説のノアの方舟ぇ?マジっすか先輩、これのどこが舟っスか」


李佳の言葉にライも方舟を見る。
確かにそれは舟とは程遠く、言ってしまえば近未来的なデジタル時計のようだ。


「オレに聞くな後輩ズ。黙ってデータ採ってろ」
『(あ…やっぱりいた)』


そんな李佳に資料と睨めっこしながら返事をしたのは、スカルキャップを被り、丸サングラスをかけた一人の男。


「こいつをどう認識するかは、本部のエリート科学班の仕事だ。オレらがやることは正確なデータを確実に渡すことよ」
「かーーーーっ!!かっこいいなぁ本部科学班!」
「そこに入るのが夢だよね」
「本部かぁ〜〜〜〜」


キラキラと理想を膨らませる三人の後ろから、ライがひょこりと顔を出した。


『久しぶり、ジジさん』
「!」
「「「ライさん!(団服姿カッコイーー!!!)」」」


その声を聞いたジジは手を止め、くるっと振り返る。


「んん?お前…ライか!すっかり美人さんになっちまってなぁ!」
『ええ?褒めてもなんも出ねぇよ』


くすくすと笑うライに、ジジもつられてにっと笑った。
そうだ、と言うジジにライが首を傾げる。


「お前、夢見るこいつらに本部の科学班のこと教えてやれ」
『えぇ?本部の科学班?』


顎に手を当て考え始めたライを、三人のキラキラした目が見つめた。


『そうだなぁ……皆毎日隈だらけ、ご飯も睡眠もいつとってるのかわからないくらいボロボロの働き詰めだな。どっかの巻き毛室長のせいで』
「「「えっ……」」」


キラキラしていた顔が一瞬にして青く染まっていく。
それに笑ったライは、でも、と続けた。


『何だかんだコムイさんに文句言いながらも、皆楽しそうにしてるけどな』
「よ、よかった……のか?」
「ライさんは、本部の皆さんが大好きなんだね」
『そりゃあ、皆大切な家族だもん。エクソシストにとって、教団の皆が笑顔で見送って、そして出迎えてくれることが一番の力だと思うよ?』
「笑顔で見送って、出迎える………


おかえりなさいウォーカーさん!早かったですね!

ただいま、蝋花(←呼び捨て)
あなたが笑顔で見送ってくれたから、とても頑張れました

あっ!ライさんもおかえりなさい!

ただいま(頭ポンッ)
蝋花もお疲れ様

うんたらかんたら…


キャーーっ!本気で頑張ろうかなぁ〜〜〜〜!」
「ボク、今蝋花が何考えてるかわかるよ」
「オレもだ…」
『はは…』


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