2万打&1周年企画 | ナノ
ルキアside


初めて彼女に出会ったのは、私が朽木家に養子に来てすぐのこと。
たまたま立ち寄った小綺麗な丘、そこに彼女は真っ直ぐ立っていた。
私より少し歳上だろうか。
肩甲骨辺りまで伸びた銀色の美しい髪が風に靡いて青空の中を舞う。
…ふと、彼女がこちらを向いた。


「あ…」
『こんにちは、いい天気だな』


久しぶりに聞いた、敬語でない言葉。
だけど。
ただの死覇装姿だからどこかの隊の一般隊士だろうか。
きっと私があの朽木家の者だと伝えれば、彼女も敬語になってしまうんだろう。


「ええ、いい天気ですね」


嫌だ、と思った。
だから私が朽木家の者だということは黙っていようと、そう思った。


『名は?』
「……ルキア、です」
『そうか、いい名だな』
「ありがとうございます」


ふわりと微笑む彼女をとても美しいと思った。
同時に羨ましく思った。


『私は奏。好きに呼んでくれ』
「では…奏さん、と…」


奏さんはとても優しく、博識だった。
まだ私が知らない尸魂界のことをたくさん教えてくれた。
こんな風に誰かと話すのは久しぶりだった。


『…少し長居しすぎたか』
「あ…時間のことなどすっかり…」
『そろそろ屋敷に戻らなければ、お前の義兄が心配するのではないか?』
「…!!」


彼女は知っていた。


「な、ぜ…」
『この間、朽木家が養子を貰ったと知った。その時はまだ其奴がどんな奴なのかは知らなかったが……ルキアを見てすぐに分かったよ』
「え…?」
『似ているな、とても』


緋真様、か。
彼女も兄様と同じように、私を通して緋真様を見ているのだろうか…


「それほど、似ていますか…?」
『見た目は。しかし、ルキアはやはりルキアだ。緋真さんとは違う』


久しぶりに、心が火を灯したように暖かくなった。


『…さて、私はそろそろ戻る。この後いろいろと用事もあるからな』
「あ、あの!」
『?』
「また…お話を…その……」
『ああ、喜んで』
「…!」
『では……後程、な』
「はい!……後、程…?」


久しぶりの、人の暖かさだった。


「…兄様、只今帰りました」
「今夜、兄に会わせたい者がいる」
「…?」
「夕食後私の部屋へ来い」
「…?分かりました…」


またどこかの名家が訪ねてくるのかと思っていた、が。


『白哉、いるか?』
「ああ」


聞き覚えのあるその声。
そして、開く襖の向こうから見える、見覚えのある姿。


『先程ぶりだな、ルキア』
「奏…さん…?」


死覇装、そしてその上には隊長のみが羽織っているはずの、隊首羽織。


「…既に知っていたのなら、わざわざここへ来なくともよかったのでは…?」
『いや、たまたま昼間会ってしまってな。だから今は、友達、として会いに来た』
「………ほう」


唖然としている私の前に座った彼女は、昼間と同じ綺麗な笑みを見せた。


『改めて、零番隊隊長の黒瀬奏だ。よろしく、ルキア』


零…番…?


『驚くのも無理は……そもそも零番隊の存在は知っているか?』
「…も、勿論です…!そんな、奏さ、…黒瀬、隊長…」
『奏でいい』
「で、ですが…」
『あまりこの手は使いたくはないが…では、命令だ』
「……奏、隊長」
『ああ、よろしく』
「よ、ろしく、お願い致します…!」


可笑しそうに笑う彼女。
隊長と死神見習いという天と地ほどの差ある関係。
しかしこの日から、友達というとても近しい関係に私たちはなった。



(ともだち
遠いようで近い存在)




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