今は夜。
船長以外の全員がこそこそと行き来する、サウザンドサニー号。
『ゾローそれ投げてー!』
飛んできたカラフルなテープをキャッチ。
『はいナミ、ありがと』
借りてた色ペンを返して。
『ん、ウソップとフランキー次あっち!』
大がかりな仕事はこの二人に。
『ブルックこれ切っといてー』
線を引いた紙を渡して。
『あ、ロビン!いい布あった?』
テーブルクロス用の布を受け取り。
『サンジー!料理どうー?』
顔を覗かせた彼に手を振られ。
『……疲れた…チョッパー癒して…!』
小さなトナカイを後ろからぎゅーっと抱き締めれば、彼はにこりと笑って私を見上げた。
か、可愛い…!癒し…!
少しだけチョッパーをもふもふしてから、最後に頭を撫でて立ち上がった。
よし、最後の仕上げ、頑張ろう。
だって、もうすぐ朝日が昇る。
『…ふー!』
全てが終わって、甲板をぐるりと見回す。
船縁は細く切られた色とりどりの紙の輪を繋げて作られたテープで縁取られ、空高く掲げられたジョリーロジャーからは綺麗にロールされたカラフルな紐がカーテンのように四方に伸ばされている。
船頭のライオンにはちょこんとパーティーぼうしが乗せられ、各クルーもそれと同じぼうしを頭に乗せていた。
甲板にある淡い赤色のテーブルクロスがかかったテーブルの上には、なんとも美味しそうな、いつもより少し豪華な料理が並ぶ。
『終わった!』
満足げに頷いて、集まる皆にお疲れ様と声をかけた。
丁度水平線の向こうから、朝日が顔を出す。
『じゃ、船長さん呼んでくるね!皆はクラッカー準備しといて!』
笑顔の皆に送り出されて、自分のクラッカーをポケットに忍ばせつつ男部屋で一人眠るルフィの元へ。
ドアの前で一旦気持ちを落ち着けて息を吸って、それからわざと大きな音を立てて思いきりドアを開けた。
『ルフィ!!敵襲!!!』
「んぁ?…敵っ!?」
『早く来てっ…!皆が!!』
「っおう!」
私を置いて真っ先に駆けていったルフィに嬉しくなって、思わずくすりと笑みを落とした。
ベッドサイドに置かれた麦わら帽子をかぶって、彼を追う。
「おれの仲間に手を出したのはどこのどいつ…!」
ルフィが甲板に走っていって叫んだ途端、ぱん!ぱん!といくつもの乾いた音がして、ルフィの声が消えた。
『ルフィ!』
当たり前のごとく無事な仲間に笑われながら、カラフルなテープまみれのルフィがきょとんとした顔でこちらを振り向く。
ぱん!と音を立てて私のクラッカーが破裂し、中身がルフィの顔にかかった。
「な、なんじゃこりゃ…!とれねぇ!」
ぽすっと麦わら帽子を彼の頭にかぶせる。
『ルフィ、あそこ見て?』
指した先は、船の帆。
上を見上げたまだカラフルなテープだらけのルフィの顔が驚きのそれへ変わる。
“happybirthday!Luffy!”
今だけの、特別な帆。
麦わらのマークの帆を降ろし、新しく皆で描いた特別な帆。
「…お前ら…」
ぽかんと開けられた口が、次第に弧を描き。
「にしししっ!ありがとう!!」
((その笑顔が目印
さあ、帆を張って!!))
(ところでよ、レン!)
(ん?なぁに?)
(敵はどこだ!!)
(え、…いないよ?)
(何っ!?いないのか!?)
(…早く食べないと食べちゃうよ?)
(それは困るっ!!)
(あはは、おめでとールフィ!)
(ん?んぉーふぁひふぁほー!!(ん?おーありがとー!!))