同じ空の下 | ナノ
コンコンというノック音に、温かい布団にくるまったままのっそりとドアの方へ顔だけ向けた。
だけど布団から出る気はない。
今は真冬。
正直に言わなくてもものすごい寒いし、なにせ私は極度の寒がりでもあるのだ。


『あーい。開いてるからどーぞー』


ベッドの上からドアの向こうにいる人に向かって声を出した。
がちゃりと開いたドアから顔を覗かせたのはこの船の二番隊隊長であり、たくさんいる私の兄のうちの一人、エース。
この船に乗ったのは私より後だけど、一番歳が近いからかよく気にかけてくれる優しいお兄ちゃん。


「よ」
『うわぁエース相変わらず寒そうなかっこしてるね』
「俺はこれが普通なの」


メラメラの実の能力の関係もあって彼は常に人並みより体温が高くいつも上半身裸だけど、今は真冬だから流石に上着は着ている。
が、私からしたら十分薄着で、見てるこっちが寒くなってくるくらい。


「それにしてもレン、お前いつまで寝てんだよ…」
『寝てない!寒いのー!ここから出たくないのー!』
「つってもよー、もう昼だぜ?」


布団にくるまって顔だけ出している状態の私に苦笑しつつエースはこちらに近づいてきて。


「マルコにいい加減起こして来いよいって言われてきたんだよ。飯だって食ってねぇだろ?サッチも心配してるぜ?ほら、とりあえず布団から出ろっ」


あまり似てないマルコの物真似をして、それからあろうことかエースは私から布団をひっぺがした。
途端に体が冷気に包まれて、一気に鳥肌が立つ。


『さむっ!?布団返せー!』
「残念だけど俺もマルコに怒られんのはごめんだからなー…ってなんだその格好…」
『え、なんか変?』


しっかりマフラー巻いて、手袋はめて、厚いセーターにもこもこしたパジャマのズボン、それに毛糸の靴下。
こんな完璧な防寒具はないでしょ。


「…見てるこっちが暑い……」
『私はこれが普通なの!』


何も防寒するものがない顔が少しひんやりしてきて、マフラーを口元を隠すように引っ張り上げながら言うとエースははぁ、とため息を吐いた。
そして布団をベットの端にぽいっと投げるとくるりと後ろを向いて私の前にしゃがむ。


「ん」
『…?』
「そんな寒いなら俺にくっついてろよ」
『いいの!?わーい!』


ぴょんとエースの背中に飛び乗るようにすれば少し前のめりになるけど、すぐにバランスを取って立ち上がった。
いつもより高い視界。
あったかい。


『エースあったかいー』
「そりゃよかった。で?どこ行きたい?兄ちゃんが連れてってやる」
『お腹すいた!』


ぎゅーっとその熱にしがみつきながら言えばエースは振り替えってニカッと笑って。


「了解!」


その笑顔を見るだけで、ぽかぽかしてくる。
私の大好きな、真っ直ぐで暖かい太陽みたいな笑顔。


「俺も腹へったなー」
『あれ?エースまだ食べてないの?』
「いんや?さっき食った」
『…相変わらずよく食べるね』
「いや、レンは食わなすぎだ」
『いやいや、エースが食べ過ぎなんだって』


大きな背中に揺られながら他愛もない会話をするけど、それも大好きな時間。
エースの首筋に頬をくっつけると、じんわりと暖かい熱が私の頬を伝わって体を回る。


「レン、くすぐってぇよー」
『兄ちゃん今日一緒に寝よ』
「お?可愛い妹の頼みなら喜んで」
『わーいエース湯たんぽー!』
「おいちょっと待て俺はモノじゃねえ」


どちらからともなく、お互い同時に声を出して笑った。



((太陽があるから
あったかいんだよ))




(ほい、食堂到着!)
(やっぱここ暖かいなー。ずっとここにいようかな…)
(んー何食おうかな…あれとこれとそれと…)
(…そんな食べんの?)

(ふぉえふふぁいほ!(これ美味いぞ!))
(よかったねー)
(ふぉはえほふぅーは?(お前も食うか?))
(や…見てるだけでお腹一杯になるよ)

((((なんで会話成立してんだよ…))))


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