Chapter:T

──『リアン』。
それは世界に潜む謎の生命体。
彼等は人を選び、力を貸す存在。
その力は無限大であり、多種多様である。

人間はリアンと契約を交わし、その力を振るう。
守る刃となるか、
凶器となるか、
それは契約者である人間次第である。


* * * *


「リオベルト様」

名を呼ばれたその人は、体を翻して名を呼んだ者の方を向いた。

「なんだい、アージュ」
「──そろそろ、5大公爵家の会議のお時間です」

そう言われて、ポケットに入っている懐中時計を見て呟いた。




「……あぁ、もうそんな時間か」




パタン、と懐中時計を閉じると同時に彼は彼を待つ馬車へと歩き出した。


彼の名はリオベルト=ウェネスト。
容姿端麗、文武両道でも有名なウェネスト公爵家の当主である。
彼自身、当主としての自覚はあるものの、自由奔放…マイペースな性格として公爵達の間で色々な噂が飛び交っている。


「道が混んでいますね…」

街中を走る馬車やが列を成しているのを見て、紅い髪の青年が呟いた。
その呟きを聴いたリオベルトは微笑って紅い髪の青年を見た。

「ふふ、その方が良いじゃないか」
「…何を仰有いますか。会議に遅れればまたどんな噂を流されることか…」

リオベルトの言葉に、青年は溜め息混じりに言った。

「私はそんなことは気にしないよ。どんな事でも所詮は噂さ。…アージュは噂を信じるのかい?」
「それは…信じないと言えば嘘になります」
「正直だね。
では──私が女遊びをしているという噂も信じるのかい?」

微笑み混じりに言ったリオベルトに、青年…アージュは顔を赤くして「そんな噂は信じませんっ!」と叫ぶように言った。

「あははっ、アージュは面白いなぁ」
「か、からかわないで下さいっ!」
「ほら、そんな事を言っている間に着いたみたいだよ。──ふむ、時間通りに着いてしまったね、詰まらない」
「リオベルト様っ!」

馬車を降り、建物の中に二人は入っていった。






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