ジリリリリリリリリリリ



変哲の無いアラーム音に少年は目を開けた
黒い髪をかき上げてぼーっ、とした顔のまま目覚まし時計に手を伸ばして止める
少しそのまま静止して目を擦ると
少年は大きく伸びをした

「朝、かぁ…」

寝台から降りて、クローゼットの中から学ランを取り出すと着替え始める
着替えを終え、鞄を掴み
とんとん、と階段を降りて下に行く
郵便受けから新聞を取り出して朝御飯の為にトースターに食パンをセット
──もう、手慣れた一連の動作

「父さん、母さん。おはよう」

仏壇に手を合わせて、少年、月原 武槻(ツキハラ ムツキ)は微笑みを浮かべると一礼して立ち上がる
椅子に腰掛け、新聞を開く
事件欄に目を通し始めて武槻は小さく呟いた

「…世の中、馬鹿ばっかりだ……」

“通り魔殺人、小学生死亡”
“○○容疑者、殺人容疑で逮捕”
そんな見出しが踊るばかりの記事
武槻は大きくため息をついてページを捲った
夢中で新聞を読んでいるとチン、とトースターが武槻を呼ぶ
その音に立ち上がって、武槻はパンを齧った



身支度を整え武槻は仏壇に向かって「いってきます」と言うと家の扉を開け、学校へ向かうべく家を後にした


武槻が見ていた仏壇
その仏壇にはあるべきものが欠けていた
それは死者の写真
そう、その仏壇には遺影が飾られていなかった──……


〜・*・〜・*・〜


大きく伸びをしながら武槻は欠伸を噛み締めた
眠い。
最近、妙な夢を見るせいでなのかいくら寝ても疲れが取れない日が続いていた為だろう

「むーつきぃいぃッ!おっはよぉ!」
「げふっ」

そんなお疲れモードの武槻に構わず突撃、という熱烈な挨拶をかます少年がいた
武槻のクラスメートにして、多分親友と言える存在である緋雨 剄仁(ヒサメ ケイジ)だ

「なんだ剄仁か…、はよ。」
「なんだとはなんだ!」
「朝から大声で友達にどつくやつは剄仁くらいしかいなかったね。ごめん」
「いや、別に…」

つか、なんで謝んの?
といまいち武槻の行動を理解していない様子の剄仁に武槻は思わず吹き出す

「ちょ、武槻!?」
「いや、ごめん、ごめん!」

ひとしきり笑ったところで武槻は剄仁に柔らかい微笑をむけた
その微笑に何かを感じたのだろう、剄仁は首を傾ぐと武槻に訊ねた

「疲れてんのか?」
「え?」
「いや、なんとなく。疲れてんのかなって…」

俺の思い違いならいーんだけど…
とぼやく剄仁を武槻は当分きょとん、とした表情で見詰めていたがふ、と表情を和らげると剄仁から目をそらして呟いた

「最近…変な夢を視るんだ」


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