目に映る青
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「わたしが結婚する相手はきっと、君じゃないと思うんだよ」
俺の部屋で、俺が出ている写真集を読んでいた彼女は、そう言った。俺は驚いて顔を上げると、彼女の視線は写真集に落としていて、無表情だった。
「…なんでいきなりそんなこと言うんスか?」
「いきなりじゃないよ、ずっと思ってた」
「俺は、できれば結婚したいと思ってるんスけど」
「わたしもそう思ってるよ、でもきっとそれは叶わない」
「…なんで」
彼女の肩に顔を埋めた。微かに香る彼女の匂いが、こんなにも心地いいのに。
「黄瀬はモデルでしょう?」
突然彼女が口にしたのは、今まで何度もいろんな人間に聞かれ、今まで何度も肯定してきた言葉だった
「でもわたしは、モデルじゃないの」
何を当たり前なことを言っているのだろうか。
そんなこと、はじめから分かり切っていることなのに。
「釣り合わないって言ってるんスか?」
彼女の口は、肯定の言葉を吐き出した。
「想像がつかないのよ、黄瀬のお嫁さんがわたしっていうの」
じゃあ、じゃあなんで
「なんで俺と付き合ってるんスか…!」
「好きだからよ」
「じゃあなんで結婚できないんスか…!」
「好きだけじゃ、結婚できないのよ」
「俺は、ずっと一緒にいたい…」
なのに、彼女は、なにも言葉を返してくれなかった。
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