汗となみだ
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「試合終了ー!!」
体育館に響く、無情の声。
ベンチにいても伝わる、熱気。
滴る汗と、もう一粒。
終わっちゃった…
「86対70で洛山高校の勝ち!礼!!」
終わっちゃったよ…
「「ありがとうございました!!」」
「高尾くんっ…!!!」
溢れそうになるなみだを
歯を食いしばって堪えた。
「応援してくれるno nameちゃんのためにもさ、ぜってー勝つから!」
夕日を背に、高尾くんがそう言ったのを覚えている。
ばか、約束破ったね。
ばか。
みんなが、泣いてる。
宮地先輩が、泣いてて、
大坪先輩も、泣いてて、
木村先輩も、泣いてた。
応援席前に並んで、みんなでお辞儀して、
でもみんななみだは止まらなくて。
緑間くんと高尾くんが、二人で話してる。
話は聞こえないけど、なんとなくわかる。
二人も、泣いてたから。
次は誠凛と海常の試合だっけ。見に行かなきゃ。
そう思うけど、足が動かない。
「勝ちたかったよぉ…!!!!」
私がコートに立っているわけではないけど、でも、悔しかった。
私も一緒に、戦ってるつもりだった。
でも、負けちゃった。
負けちゃったんだ。
緑間くんと高尾くんの必殺技でも、赤司くんの存在が大きすぎて、逆転することができなかった。
控え室の前。
みんなが泣いてて、入りづらい。
廊下の壁に寄りかかり、みんなが落ち着くのを待った。
「no nameちゃん」
「高尾、くん」
気がつくと、目の前に、高尾くん。
目が真っ赤で、目尻にはまだなみだが溜まっている。
私も、それにつられてなみだを零す。
「ワリー、負けちった」
「…うん」
「約束、したのにな」
「…うん」
「ほんとは、」
「…うん」
「勝って、no nameちゃんに告ろうって思ってたんだけど、」
「…うん」
「ダッセェ…カッコワリーよな」
「…ううん」
私は、高尾くんを精一杯抱きしめた。
「no nameちゃん…?」
「かっこ悪くなんか、ないよ」
「…」
「いっぱい走って、いっぱい汗かいて、いっぱい戦って、いっぱい泣いてる高尾くん、かっこいいよ」
頭の上で、鼻をすする音がする。それと同時に、高尾くんが、私を強く抱きしめ返した。
「ありがと…no nameちゃん…」
高尾くんの頭が、私の肩に埋められた。
嗚咽が聞こえる。
私も、高尾くんのユニフォームを握りしめて、泣いた。
「好きだ」
嗚咽の中で、確かにその言葉が聞こえた。
「私も、好きだよ」
なみだでぐしゃぐしゃな顔で、笑いあった。
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