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真っ直ぐな人はこれだから

 私、真田幸村、苦手だ。三次元で相対してみて自覚した。キャラとしては普通に好きなんですよ。ただ、その熱血と正直の矛先が私に向くと耐えられないですね。無理ですね。

「カナメ殿は、優しい方なのでござるな」

 ほら! ね! これは無理ですね! まっすぐにもほどがあって、非常に気恥ずかしい。
 ぐわっと頬が火照ってくる。「いや、あの、それは、違う」だとかコミュ障を発揮することしかできない私を見て、猿飛さんが微笑ましそうだ。貴様、冬の猿らしく温泉に頭から突っこんでやろうか。四三度の熱めのお湯をご所望とみたぞ。

 現在地、甲斐。
 私は、依頼に同行している真田さんに褒め殺しにされかかっている。やめろ。本気でやめろ。辺りを見ろ! 雪景色だ! なのに私はいまならコートがいらないくらいに体温がバグっている!
 そもそもなぜ私は褒め殺されているのか、という話だ。きっかけは簡単で、渡カナメはどうして魔獣使いになったのか、といった話題になった。振ってきたのは真田さんだ。俺様も知りたーい、と目を光らせてきたのは猿飛さんだ。別になんてことないですよー、と私は曖昧に笑った。
 そう、なんてことはない。私はヒナのタマゴを守っていたワカシャモのことを根に持っていて、もうあんな思いをするのはたくさんなのだ。だから、ジラーチの提案に頷いた。それだけのこと。そしてこれは私のための決断なので、私は優しくなんてない。。
 なのにどうして、冒頭のようなセリフが飛び出てくるのだろう。虎若子恐るべし。
 違う、違う、としどろもどろに否定を掲げる私に、なぁ佐助、と真田さんは従者を振り返った。

「魔獣使いとしての仕事は、誰にでもできることだろうか?」
「いんや。誰にもできることじゃあないね。俺様はそう思うよ」

 おまえ、猿飛佐助。ぜったいそれ、いろいろ含んでる。分かるぞ。私は真田幸村は信じるが、おまえの言うことは常に疑う。おかげで少し熱が引いてきました。サンキュー蒼天疾駆。

『カナメ』
「何」

 肩に乗っていたジラーチが、ぺちりとこちらの頬に触れる。ひんやりしてるね。さすが鋼タイプ。

『顔、真っ赤』

 裏切り者のブルータスを黙ってボールに引っ込める。深呼吸をして、気を取り直そう。ふ、と背後に立っていた柊さんと目が合う。怪訝そうに眉をしかめられた。ああ、やっぱこれだわ。落ち着く。
 思わずそっと両手を合わせると、何してんの、と猿飛さんに言われた。日常に感謝しているんです。





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